第2章 妹達編
第33話 看病
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あの脚に少年は自分を乗せている。
一歩、また一歩と文にするだけならば「歩く」だけで片付いてしまう動作を少年はここ数年命を懸けて行ってきた。
そんな努力を打ち消すように筋力は弱くなり、重力の影響を日に日に強く感じる。
人間として生物としてこの場に存在しているだけで命を削ぎ落とされる気分だ。
少年は音を立てて倒れ込んだ。
重力に負け、全身の関節が曲がり出して顎を床に付けてしまう。
「あっ!!」
あたしは倒れてしまった彼を見下ろした。
こちらも手摺りに捕まり、体重を足腰に掛けている。しかし、日常の動作には子供ながらに不自由していなかった。
案内をしている白衣を着た中年男性が淡々と病気について機械的に説明していく。
「筋力が徐々に低下していく病気だよ。彼はそんな理不尽な生を背負って生を受けた。だからあのように努力して病気と戦っているんだ」
諦めずに手摺りの支えを掴みながら再び立ち上がろうとする少年を見て、思わず力が入ってしまう。
無事立ち上がった時には、達成感からかあたしは笑顔で彼の健闘を讃えた。
大丈夫
きっと治るから
だってあんなに頑張っているんだもん
いつか歩けるようになるよ
「しかし、たとえどんなに努力しても筋力の低下は止まらない。現在の医学に根本的な治療法は無く、やがて立ち上がる事もできなくなり、最後は自分での呼吸も心臓の活躍さえ困難に......」
現実に希望なんてなくて
ただ真っ直ぐ残酷な崖が待っているだけだった
徐々に身体の自由を奪われていき、自分で呼吸することも心臓の拍動も失われていく
それは死を意味する
死は知っていた
動かなくなること、寂しくて悲しいことだ
「だが、それはあくまで今現在の話だ。君の力を使えば彼らを助ける事ができれかもしれない」
白衣を着た男性は、本題とばかりに子供のあたしには分からない用語で希望を述べている。
「脳の命令は電気信号によって筋肉に伝えられる。もし仮に、生体電気を操る方法があれば、通常の神経ルートを使わずに筋肉を動かせるはず」
「君の電撃使い(エレクトロマスター)としての力を解明し『植え付ける』事ができれば、筋ジストロフィーを克服できるかもしれないんだ」
正直、学校でも習っていないような用語を並べられても意味不明だった。
だけど、少しだけ理解出来たのは
あたしの能力が彼の病気を治せるかもしれないことだ
白衣の男は、膝を曲げて目線を合わすと手を伸ばした。
「君のDNAマップを提供してもらえないだろうか?」
それで助けられるなら安いと思った
自分の電気の能力が役に立ってくれることが嬉しかった
「......うん」
気がつけば頷いていた。
白衣の男は、そのままエスコートをするかのようにあたしを連
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