暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
五節:朧気に映る “刃”
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対処しようと化け物が踏みだした足をまた避けた。


「ギィ……オオォォアッ!!」
「……シィッ!」


 繰り出される第三の腕に切っ先を当てて、軌道を逸らし安全地帯へ僅かに踏み入れる。
 更に三連斬撃『デルタ・アタック』で間髪いれずに追撃。


「ギ、アアァァァァァ!!」
「甘ぇ……」


 体を縮めてフェイントを絡めた化物の重攻撃には、ガトウも意趣返しかフェイントでモンスターの回避方向を誘導してまんまと五連撃喰らわせた。

 武器を変えても依然、優勢なのはガトウ。
 多数の武器スキルを取っているだけあって、その扱いは並のプレイヤーを凌駕している。
 何より本人の体捌きが、モンスターの異質な攻撃に付いて行けているのだから……この異常な状況に、しかし誰を差し置いてもこの上なく向いていた人物だと言えよう。

 このまま行けばこのバクより生まれた『異形』を、実力差から押し切れそうだ。



 ―――否、そう簡単には行かないのが、イレギュラーと言うモノ。


「ギャロロロロロロロロロロロロロロロロオオオオオオオ!!!」

「チ……!」
「うぐっ……うるさあっ!?」 


 状況は二転三転する。
 中に溜めこんだ激情を口より迸らせたのだと、そう言いきってもいいほどの強烈な雄叫びを、スパルタ兵型の『異形』は口からコレでもかと吐き出す。
 煩わしい事この上ないと、内に溜まる苛立ちを隠さない『異形』モンスターの咆哮だ。

 しかも、ただの獣の唸りとはほど遠い。
 それは恰もガラスを引っ掻いたような物に、幽鬼の叫びを無理に重ね合わせた様な、不快極まりない超音波交じりの奇声。
 ガトウは思わず動きを止めリズベットは耳を塞いでしまう。

 その……たった一回の、ダメージすら皆無な筈のその“声”が……何とか続いていた攻防を、此処で途切れさせる一旦となった。


 耳を塞ぎ、意識を僅かに取られた―――その瞬間が、双方にとって『命取り』だったのだ。


「ギュ、ギャロアアアッ!」
「チッ…………避けろ!!」
「へ? っ!? わああっ!?」


 突如としてターゲットを変え、第三の腕が直角に曲がり襲いかかってきた。

 奇声により呆けていたリズベットは窮地の訪れに慌てながらも如何にか盾を構えるものの、のしかかってくるその余りの衝撃に踏ん張りが利かず大きく弾き飛ばされた。
 例えるなら―――加速したダンプカーに正面から衝突した様な、途轍もない力がリズベットに多大なダメージを負わせてしまった。

 ゲーム内の筈なのに衝撃から目が霞み体が痛み、それでもどうにか立ち上がって腰のポーションを探り、逆にガトウへ隙を見せた化け物が眼を貫かれるのが目に入ると好機とばかりに口に含む。


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