暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
五節:朧気に映る “刃”
[11/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ックステップで引き始めた。
 マスターメイサーと自ら宣言するだけあって、並のプレイヤーより退避速度が格段に速い。

 相手の『異形』は体勢を立て直しかけているが、ガトウに釘付けなのは何も変わらず、このまま行けば仮初ながら安全圏へ移動できる。

 ガトウはリズベットの方へ視線を軽く向け……その隙をついた『異形』の第三腕での豪裂な突きが降り注いだ。
 ……それでもやはりガトウのHPは殆ど減らない。


「うぐっ……あ、よ、よっしゃ!!」


 背中に来た衝撃で一瞬戸惑うも、その感情はすぐに喜びへ変わる。
 ついに―――壁際まで後退する事に成功したのだから。

 リズベットは内心でガッツポーズをとった。
 『異形』は第三の腕をあらぬ方へ向けているが、何の心配も要らない。

 何せ数十メートルなどおこがましいぐらい距離があるのだから、あとは盾さえ構えていれば予想外に対処できる。


「左に跳べぇっ!!」
「へ―――――?」


 なのに――――――またも突然だった。

 ガトウの叫びがリズベットの耳を劈き、思わず彼の方を凝視する。
 彼の放った言葉に、数瞬とどまったのが命運を分けた……。



「が、ぼっ……?」


 ―――唐突な衝撃、そして感じない筈の“痛み”。

 何が起こったのか、他ならぬ彼女自身が数秒ばかり判断できなかった。
 緩慢な動作で己が腹を見れば…………リズベットのその腹部を―――化物の先端が『貫いて』いた。

 
(え……?)


 腹部からは血の如く、赤いダメージエフェクトがとめどなく散っていく。


 唐突に起こった事態にリズベットは思考が付いて行かなくなり、背後を見る余裕もなく、引き抜かれて倒れてもまだ何が起こったか理解できないと、目を見開いたまま硬直している。
 ……だが、止まること無く減っていくHP、自身の命そのものである青いバーを見て、顔を恐怖にひきつらせた。

 叫ぼうにも、声は出ない。


 身の感じる冷たさは……余りにもあっけなく訪れ、余りにも素早く見に絡みつく、“死” の概念。


(い、いや……死にたくないっ……死にたくない、のにぃっ……! いや、いやああぁぁ……いやああああっ……!?)


 体を幾ら震わせようとも減少は止まらず、幾らもがいて足掻こうともアイテムに手は届かない……否、HPが0と数値的に決まった時点で、回復アイテムなど意味が無い。

 圧倒的な死の恐怖と、鉛以上に重くのしかかるダメージから、意識は段々遠のいて行く。
 視界が闇に、包まれていく。


 彼女が抗えぬ重みに屈し、瞼を閉じる瞬間……最後に見たもの。
 それは、自分を葬った化け物と、パーティメンバーのガトウ。
 そして
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ