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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
五節:朧気に映る “刃”
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ックステップで引き始めた。
マスターメイサーと自ら宣言するだけあって、並のプレイヤーより退避速度が格段に速い。
相手の『異形』は体勢を立て直しかけているが、ガトウに釘付けなのは何も変わらず、このまま行けば仮初ながら安全圏へ移動できる。
ガトウはリズベットの方へ視線を軽く向け……その隙をついた『異形』の第三腕での豪裂な突きが降り注いだ。
……それでもやはりガトウのHPは殆ど減らない。
「うぐっ……あ、よ、よっしゃ!!」
背中に来た衝撃で一瞬戸惑うも、その感情はすぐに喜びへ変わる。
ついに―――壁際まで後退する事に成功したのだから。
リズベットは内心でガッツポーズをとった。
『異形』は第三の腕をあらぬ方へ向けているが、何の心配も要らない。
何せ数十メートルなどおこがましいぐらい距離があるのだから、あとは盾さえ構えていれば予想外に対処できる。
「左に跳べぇっ!!」
「へ―――――?」
なのに――――――またも突然だった。
ガトウの叫びがリズベットの耳を劈き、思わず彼の方を凝視する。
彼の放った言葉に、数瞬とどまったのが命運を分けた……。
「が、ぼっ……?」
―――唐突な衝撃、そして感じない筈の“痛み”。
何が起こったのか、他ならぬ彼女自身が数秒ばかり判断できなかった。
緩慢な動作で己が腹を見れば…………リズベットのその腹部を―――化物の先端が『貫いて』いた。
(え……?)
腹部からは血の如く、赤いダメージエフェクトがとめどなく散っていく。
唐突に起こった事態にリズベットは思考が付いて行かなくなり、背後を見る余裕もなく、引き抜かれて倒れてもまだ何が起こったか理解できないと、目を見開いたまま硬直している。
……だが、止まること無く減っていくHP、自身の命そのものである青いバーを見て、顔を恐怖にひきつらせた。
叫ぼうにも、声は出ない。
身の感じる冷たさは……余りにもあっけなく訪れ、余りにも素早く見に絡みつく、“死” の概念。
(い、いや……死にたくないっ……死にたくない、のにぃっ……! いや、いやああぁぁ……いやああああっ……!?)
体を幾ら震わせようとも減少は止まらず、幾らもがいて足掻こうともアイテムに手は届かない……否、HPが0と数値的に決まった時点で、回復アイテムなど意味が無い。
圧倒的な死の恐怖と、鉛以上に重くのしかかるダメージから、意識は段々遠のいて行く。
視界が闇に、包まれていく。
彼女が抗えぬ重みに屈し、瞼を閉じる瞬間……最後に見たもの。
それは、自分を葬った化け物と、パーティメンバーのガトウ。
そして
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