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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
五節:朧気に映る “刃”
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 リズベットとガトウのコンビがインゴット集めにと、尖塔へ向けて歩き出してから十分足らず。

 その僅かな時間で、音もなく何時の間にPOPしたのか草むらから狼の様なモンスターが二匹現れた。


「早速来たみたいね! 片方よろしくガトウ!」
「あぁ……」
「もうちょっと気合い入れらんないのあんた?」


 リズベットは早速武器である片手鎚……正確には尖端に突起の付いた『槌矛』と呼ばれる、ナックルガード付きメイスを構える。
 装備としてのグレードの高さ、しっかりと強化してあるという事が、深みのある輝きからも見て取れる。

 ガトウは流石に戦闘だからか寝ておらず、腰に差してある短剣を構えた。
 鋼鉄色一色―――かと思いきや太陽光を受けて薄く、それでいて確かに青緑と似た色の独特な艶を持っており、リズベットも見た事が無く鍛冶屋名鑑にも載っていない短剣(それ)は、果たして装備としてのレベルは如何ほどの代物なのか見当もつかない。


 そう言えば、彼の武具は全て自分が見聞きした事もない装備だと……リズベットが好奇心をそそられ目線がそれたと同時に、意識が外れたその時をチャンスと判断したか狼が飛びかかってきた。


「ガルルアッ!」
「おおっと、甘いわね!!」


 メイスで一瞬受け止めすぐに体重のよっている方向へと受け流し、体勢を崩した狼の背後からリズベットは片手鎚スキル初級単発技を繰りだしてダメージを与えた。

 片手鎚は片手に装備できる武器の中でも一二を争う威力を誇るが、その代償に振る速度の遅さもまた一二を争う結果となっている。
 だからこそ、プレイヤースキルがそこまで高くない者は勿論、多くのプレイヤーが盾とセットで装備している……が、彼女はどうもそうではない様子。

 デスゲームで無ければスタイル優先でも良かったが、そんな事が出来るのはある程度スピードが速い武器に限られるだろう。
 となると、そこそこ腕に覚えがあるとみていいい。


「グルゥ……アアアアッ!」
「これでぇっ、終わりっ!!」
「オオオォォ――――」


 五十五層とは言えパーティー二人のレベルは差はあれど高く、装備のグレードや強化段階もそんじょ其処らの物では無いので、リズベットはパターン化された攻防を五回程行って狼のHPを削り切った。破砕音と共にポリゴン破片がまき散らされる。

 ガトウの方はどうだろうかと顔を向けると―――何時の間に終わっていたかナイフをクルクル回し、時々手の位置を移動させて遊んでいた。
 まぁ……それだけの余裕があったのであろうが、こっちがそこそこ真剣にやった後でそんなの遊びを繰り出されれば、リズベットも何処かやるせないものを感じてしまう。


「……」

 すると、ガトウが
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