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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
四節:鍛冶屋リズベット
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その時だった……先の怒鳴り合い―――もとい一方的に怒鳴る理由を作った、長身の男性プレイヤーが入って来たのは。
「……すんませーん……」
「ぬぐっ!?」
リズベットは彼の発言に少しズッコケかけたが、これは別に発言やプレイヤーの容姿がおかしかったのではなく、“すんませ−ん” のイントネーションに問題があった。
普通はある程度平坦な発声になる筈だ。
だが、彼は『すん(↑)ませーん(↓)』と何かそう言わざるを得ない出来事でもあったのかという、しかし気だるげでテンション低く奇妙なイントネーションで発せられたので、思わずリズベットはこけかけたという訳だ。
「…………」
「あ、ああはい! いらっしゃいませ、リズベット武具店へようこそ! 何をお探しですか?」
言いながら男の武装を見て、リズベットは内心少々不安に思う。
先にも記したが彼女の店に置いてある武器防具は全て要求パラメータが高く、中層プレイヤーでは装備可能である者が少ないであろうと言える程。
攻略組なら問題は無いが、目の前の男は左側に袖の無いインナーと金属の少ない防具、若干太く長い左手腕に包帯を―――恐らく何らかの特殊効果があると思われる―――線が出るぐらい厳重に巻き、鍔の無く刃と柄の境目が分かりずらい短剣という、奇怪ながらも得物や防具の造形に輝きからも余りグレードの高いものを付けている風には見えないプレイヤー。
浅黒い肌や顔の大きな傷、アイテムで染色したのであろう鉄色に暗銀のメッシュを入れた短髪と、武器其々は勿論容姿も中々に特徴的であり、記憶に残りそうな人物ながらリズベットが今まで見聞きした事がなかったので、尚更不安になるのが普通だった。
彼女も殊更に情報を求める質では無いのでただ自身が知らなかっただけかもしれないが、それにしたって軽装で短剣のプレイヤーが攻略組に名を連ねていれば、攻略組を主に顧客とする彼女の耳にも少しは活躍が入ってくる筈である。
そんな噂が何も無いからこそ、リズベットは不安に思っているのだ。
「……」
彼女の内心など知ってか知らずか、男は黙って彼女を見つめている。
……が、そこからまたも奇妙な現象が起きる。
「……」
「……?」
何故だろうか―――数秒ほど時が経とうとも、数十秒ほど時が流がれようとも……男は一向に口を開こうとしない。
先まで細められていた眼を僅かに開き、白黒逆転したその不気味な瞳を彼女へ向けて、嫌に鋭い視線をコレでもかと注ぎ込んでいるのだ。
「……えっと……?」
「……」
既に一分が過ぎ。
なのに……いっそ不気味に思えるほどに、男はじーーーっと細い相貌を彼女へと向け続け、リズベット
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