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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
二節:睡眠の訳……?
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日本人ならば自然と気を落ち着かせられるような、島国特有の独特な雰囲気漂う和風な外観を持ち、西洋風味な外観が多いアインクラッドの中では少しばかり異彩を放っている、極めつけは迷宮区ですら『千蛇城』と名付けられている……和風好きにはたまらない十層、その主街区。
長身で褐色肌を持つ短髪の男が、顔に付いている交差した傷を一度撫で、髪を強く掻きながら自分の寝床へと脚を運んでいた。
特徴的な傷や鉄色と暗銀のメッシュ掛かりな髪色の他、いやに細長い片手剣なのか細剣なのか片手半剣なのかよく分からない刀剣という得物を背負っている……言わずもがな、ガトウである。
何時も何時も飛んでもない場所で寝ている彼ではあるが、今日ばかりは安全且つ寝心地の良いベッドにて睡眠を取るつもりなのだろうか。
しかしながら、彼の行動には疑問が残る……何故なのか。
実は、今現在の時刻は十時丁度。つまりまだまだ寝る時間ですらないのだ。
休日の二度寝なら有り得るかもしれないが、朝起きて二、三時間経ってすぐまた寝付くなど、常識はずれにも程がある。
しかもこのガトウという男は、食事やレベル上げもある為にそうそう何時もではないが、それでも高い頻度で同じ事を繰り返しているので、常識的観点から見れば余計におかしく思えてしまう。
だが、周りは生き残る為にレベルを上げ、ソロならば他すべてのプレイヤーに、パーティを組んでいるならば無所属のプレイヤーに構っている暇など無く、生産職についているプレイヤーも何も買わずにふらふら歩いて通り過ぎて行くだけの人物に注意を見けている暇など無いので、始めてみた者こそ二度見をするが大半は目線向けこそすれ、驚く者などいない。
ならば、それだけガトウの奇行が有名になっているのか……と言われればそうでもない。
彼はダンジョンにフィールドに街中に、攻略中の最上層―――現在は六十層―――からアインクランドの基盤たる第一層、その主街区である『始まりの街』まで、好き勝手に放浪者の如く行ったり来たりしている上、意外と影を選んで寝ているのでそこまで人目に付く訳でも無かったりする。
流石にダンジョン内でしかもモンスターの湧出地帯で睡眠をとっている物が居るなど想像もしないだろうから、最初にガトウの噂が流れた時情報集めに難航したのも納得できる。
尤も、ガトウに関する情報は彼自身特に隠すつもりがないのか、聞かれた事は全て答えを返しており、その情報をたどっていくと何故今まで見つけられなかったかが分かり、同時に余りにくだらない理由でげんなりする事請け合いだ。
こんな睡眠バカな寝ぼすけけ太郎が、実際攻略そのものには参加していないのに―――寝てばかり居ればそれも当然だが――
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