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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
初節:鉄色の男
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前らは……」


 どういう意味として取ればいいのか分からない言葉の後、上へ一旦顔を向けてから口を開く。


「…………じゃ、通れ」


 今度は立ち止まること無く歩いて迷宮区の奥へと消えていった。

 暫く攻略組の間に沈黙が走る。
 だが、呆けている時間は無いとばかりにモンスターがPOPしてしまい、少女達は強制的に思考を止めざるを得なくなる。
 そしてそのまま攻略は続けられ……二日後に五十六層へと繋がる道は突破されたが、あの鉄色と暗銀の男は終ぞ現れなかったという。

 しかし、奇々怪々な人物の噂は、人の口に戸は立てられぬと瞬く間に広がり、攻略を邪魔した事と攻略組に勝るとも劣らない実力を持つという事実で、良くも悪くも彼らの間で有名となった。















「―――というのが、有名になった経緯とその人の実力よ」
「脱力状態からソニックリープやホリゾンタル・スクエアを完璧に受け流した……? 防いだんじゃあ無くてか?」
「そもそも短剣じゃあ防げないだろうシ、軽く逸らしたり回避したってのが妥当かもナ」
「ああ……確かにな」


 今まであまり対人戦闘を行った事が無いキリトでも、その人物……GATOの実力が如何ほどの物か理解していた。

 SAOは近接戦闘重視というそのゲーム仕様上大勢で囲んでくるモンスターはほぼおらず、居ても小動物系など相手のしやすい種類に限られ、そしてソードスキルという存在から寧ろ、ドラゴンよりも人型の敵の方が手強いというケースも存在する。
 だからこそ疑似対人戦とでも言うべきものは幾つか行ってきたのだが、AIや自分は勿論の頃、ちらと見かけた別のプレイヤーでさえ、そんな捌き方をしている物など見た事がなかった。

 ノーダメージに近い状態で切り抜けられるプレイヤーならばギルドKoBの団長が居るのだが、彼のスタイルはあくまで『盾と剣』による攻防自在の戦法であり、鉄色と暗銀の男が行った『プレイヤースキルより』のテクニカルな回避では無い。


「話を聞いた限りじゃあ、どうも反応速度が驚異的ってよりも攻撃が来る場所や、スキルの種類を先読みしているようにも感じたけどな」
「見ている方としてはかなり信じがたい光景だったわ……」
「当り前サ。なにせ殆ど寝起きみたいな状態で本気もクソもなかったろうニ、余裕綽々で勝っちまったんだかラ、そりゃビックリしたって仕方ないヨ」


 何よりまず素の状態では再現できぬぐらい、恐ろしく速いソードスキルを本気も出さずに見切る等、並大抵の芸当では無い。
 しかもリーチの差では男性プレイヤーの方に利があったのだ。
 それを感じさせず覆してしてしまう腕前は、攻略組の中にすら存在するかどうかも分からない。


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