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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
初節:鉄色の男
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のの少なからず戸惑った。

 と―――そこで漸く目の前の男が頭を上げ、アスナら攻略組プレイヤーを細めた眼でマジマジと見る。


「う……くぁ……ぉぁ……」


 そして、大きく欠伸をした。

 まさか……?
 と、予想外のリアクションで怒りが静まっていく彼等に向けたモノかは知らないが……男は首を二、三度鳴らして、伸びのつもりか肘を曲げたまま肩甲骨を内側に寄せてから、それを見た彼らの予想通りの言葉を呟いた。


「あぁ……そう、か……もうか」


 何とこの男、モンスターが出没する迷宮区での呑気に睡眠をとっていたのだ。
 しかも“安全地帯”と呼ばれるモンスターが湧出しない場所では無く、モンスターが出現し辛いだけでエンカウントしてしまう可能性は大いにあるこんな細い道で。

 更に言うなら、安全地帯と呼ばれる場所でもモンスターの呻き声に叫び声、足音に時折放たれる金属音等でとても熟睡できる環境だとは言えず、精々小休止に使う程度の場所である。
 よしんば目の前の男が余程の剛胆家だとして、後方からならまだしも前方からはモンスターに襲われ戦闘となる事態は避けられなかった筈。

 ……ならば如何して彼はこんな場所で普通に座っていたのだろうか。


 そんな不可解な事象を理解したプレイヤー達の間に疑心が募り始める。
 ……それと同時、男は立ち上がると、彼等の方を漸くちゃんと見ながら、今度は話しかけているととれる言葉を発した。


「悪かったもう、通っていい。用事は、既に無ぇ……ぬぅ……駄目だな、まだ……まだ……」


 緊張感の欠片も無い声で言われるが、再三声を掛けても反応しなかったクセに今更通っていいなど言われても、攻略組プレイヤー達の腹の虫が収まる筈もない。

 先程彼に怒鳴った男性プレイヤーが無言の怒りを湛え、背中の片手剣を引き抜くと彼に先端を向けた。
 ゲームとは言え本当に相手を殺してしまえる環境なのに、感情任せの行動を取っていい物だろうか?
 不安になりそうな光景だったが、どういう訳か男はそのまま動かず彼を睨みつけたまま。


 ならば何をするつもりなのか……それは男の口から直接語られた。


「デュエルだ! お前が勝ったら何も言わねぇが……俺が勝ったらアイテム吐き出して土下座しろ!!」
「あ〜…………あ?」


 デュエル―――それはこの世界での数少ない娯楽の一つであり、同時に代込みでもあるシステムである。

 ソードアート・オンラインとは名の通り剣が主題となっているゲームで、西洋のロングソードが代表的な片手直剣に、刺突剣として有名なレイピアの属する細剣やツヴァイハンダー等の両手剣、東洋でよくつかわれるサーベルが属する曲刀、ナイフなどで此方も御馴染である短剣の他に、片
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