暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第90話 リーザスの鬼門
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耐え続けながら進言をするのだが……。返答は最悪だった。

「却下だよ。現場をみずに下った命令なんぞに意味はないさ」
「な、っ……! なんということを……!!」

 トーマの命令を完全に無視する意向だったのだ。
 それを訊いて、困惑を浮かべる兵士達。

「(このような……、このような方だったか……? 敵に容赦はなかったが、……今までトーマ様に逆らうような素振りなど………!!)」

 圧倒的な力とそれに見合うだけのカリスマ性、存在感を携えたのが、ヘルマンの勇にして誇りであるトーマ・リプトンだ。

 その実力を痛い程理解している筈のミネバは、基本的に忠実に従っていた筈だった。技量も誇りも質も落ちてゆく大隊長クラスに置いて、トーマの本体に所属しているガイヤス・ヤストと並び、優秀な兵士だった筈なのだ。

 なのに、ここに来てのこの横暴さを目の当たりにして、思わず絶句してしまう。

「さ、配置につきな。ちょいと最前線だが、そりゃ仕方ない……、どうやら、奴ら、また踵返してやってきたんだろ? あんたらが集まってくるぐらいだからね。本体組の勇ましさとやらを見せとくれよ」
「な、納得できません!!」
「……………へぇ?」

 それを訊いて、ミネバは初めて表情をわずかに変えた。うすら笑みを浮かべていた女丈夫の唇が……僅かにつり上がったのだ。

「私だけでも、リーザスに戻り、せめて、せめて皇子の……司令官の裁可を仰がせてください! 将軍の命に従ってここに来たのです。なのにその命を………」

 男は、最後まで言葉をいえなかった。

「え…………………ぁ…………」

 何故なら、首から上がなくなってしまったのだから。
 目にも止まらぬ無慈悲の斧が、彼の首を食いちぎったのだ。

「―――――敵前逃亡は、死刑だよ」

 そして、無造作にミネバは味方の血が付いた戦斧を振るい、血を落とす。

 それを目の当たりにして、場が凍りついた。

「な、あ、ああ………っ」
「そ、んな………」

 後退りさえもしていた兵士がいたのだが、それをさせないのが、ミネバの眼光と、そして低く、重い言動だった。

「配置につきな。……それとも、そんなにこの世に未練がないのかい」

 それは静かな、ミネバの恫喝だった。

 その一言で、もう取るべき行動が制限されてしまうのは、抗議に来た小隊長達だ。

 目の前にいるのは、女――だが、腕は現3軍Np.2。
 自分たちが束になったところで、文字通り絵に書いた兵士達を破る様に、散らされてしまうだろう。

 その未来がはっきりと見えたのだ。まるで走馬灯のように――。

「は、配置に戻ります……っ」

 もう、そう言うしかない。
 言わなければ殺される。そして、離れなけ
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