第3章 リーザス陥落
第90話 リーザスの鬼門
[14/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
耐え続けながら進言をするのだが……。返答は最悪だった。
「却下だよ。現場をみずに下った命令なんぞに意味はないさ」
「な、っ……! なんということを……!!」
トーマの命令を完全に無視する意向だったのだ。
それを訊いて、困惑を浮かべる兵士達。
「(このような……、このような方だったか……? 敵に容赦はなかったが、……今までトーマ様に逆らうような素振りなど………!!)」
圧倒的な力とそれに見合うだけのカリスマ性、存在感を携えたのが、ヘルマンの勇にして誇りであるトーマ・リプトンだ。
その実力を痛い程理解している筈のミネバは、基本的に忠実に従っていた筈だった。技量も誇りも質も落ちてゆく大隊長クラスに置いて、トーマの本体に所属しているガイヤス・ヤストと並び、優秀な兵士だった筈なのだ。
なのに、ここに来てのこの横暴さを目の当たりにして、思わず絶句してしまう。
「さ、配置につきな。ちょいと最前線だが、そりゃ仕方ない……、どうやら、奴ら、また踵返してやってきたんだろ? あんたらが集まってくるぐらいだからね。本体組の勇ましさとやらを見せとくれよ」
「な、納得できません!!」
「……………へぇ?」
それを訊いて、ミネバは初めて表情をわずかに変えた。うすら笑みを浮かべていた女丈夫の唇が……僅かにつり上がったのだ。
「私だけでも、リーザスに戻り、せめて、せめて皇子の……司令官の裁可を仰がせてください! 将軍の命に従ってここに来たのです。なのにその命を………」
男は、最後まで言葉をいえなかった。
「え…………………ぁ…………」
何故なら、首から上がなくなってしまったのだから。
目にも止まらぬ無慈悲の斧が、彼の首を食いちぎったのだ。
「―――――敵前逃亡は、死刑だよ」
そして、無造作にミネバは味方の血が付いた戦斧を振るい、血を落とす。
それを目の当たりにして、場が凍りついた。
「な、あ、ああ………っ」
「そ、んな………」
後退りさえもしていた兵士がいたのだが、それをさせないのが、ミネバの眼光と、そして低く、重い言動だった。
「配置につきな。……それとも、そんなにこの世に未練がないのかい」
それは静かな、ミネバの恫喝だった。
その一言で、もう取るべき行動が制限されてしまうのは、抗議に来た小隊長達だ。
目の前にいるのは、女――だが、腕は現3軍Np.2。
自分たちが束になったところで、文字通り絵に書いた兵士達を破る様に、散らされてしまうだろう。
その未来がはっきりと見えたのだ。まるで走馬灯のように――。
「は、配置に戻ります……っ」
もう、そう言うしかない。
言わなければ殺される。そして、離れなけ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ