第三十話 アニエスの新生活
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は言われたとおりに、動きやすい格好でセバスチャンを待っていた。
新宮殿はそれ自体が町の様なもので、大小、様々な建物が建っていた。
立ち並ぶ建物の中で、一つだけモクモクと黒煙が昇る異彩を放つ建物があった。
「煙の昇ってる建物、ひょっとして火事なんじゃないですか?」
アニエスは門の前に立っている衛兵に聞いてみたが、銅像の様にピクリとも動かない。
「あの建物は、ミスタ・ラザールの研究所です。火事ではありません」
答えたのは、セバスチャンだった。
セバスチャンは、一頭立ての小さな馬車に乗ってやって来た。
「研究所……ですか?」
「日々、怪しい研究が行われていると、もっぱらの噂です」
「大丈夫なんですか?」
「まぁ、『知らぬがブリミル』と殿下も申しておられましたし、我々が知る事ではないのでしょう。さ、早速参りましょう」
「はい」
アニエスは助手席に座り、馬車は目的地に向かって走り出した。
後にラザールの研究所は、『水蒸気機関』や『TNT火薬』など、様々な異色の発明品を魔法の世界に送り出す事になる。
……
アニエス達を乗せた馬車は広い新宮殿の敷地を進む。
敷地内にある広大な練兵場では、軍楽隊の行進曲に合わせて小銃を担いだ歩兵が行進していた。
ちなみに行進曲は、マクシミリアンが前世で好きだった『La Victoire est a nous(勝利は我がもの)』を、持ち前の絶対音感で耳コピして発表していた。
現在、『Kar98k』のコピー銃を作成中だが、時間がかかるため『つなぎ』として、既存のマスケット銃に改造が加えられた。
改造例として、銃身内にライフリングが施され、円錐型の銃弾を採用し、地球で言う『ミニエー銃』に改造された。
この改造によって、以前のマスケット銃では100メイルほどの射程だったが、ミニエー銃では400〜500メイルに向上した。
馬車は練兵場を過ぎて敷地の奥へ奥へと進む。
「……?」
アニエスは不審に思った。
先ほどから、すれ違う人がまったく居なくなったからだ。
「ここから先は、無断に入れば命の無い、トリステイン王国の秘密区画です」
「秘密区画……」
「ミス・ミラン。許可を出したマクシミリアン殿下の信頼を裏切るような行動は、どうか慎んで頂きたい」
「……」
セバスチャンの言葉にアニエスは無言で頷いた。
……
更に馬車は進み、地球で言う倉庫の様な巨大な施設に到着した。
「ここです」
セバスチャンは馬車から降りると、倉庫前に行き、アニエスも慌てて後を追った。
分厚い鉄製の扉の前では、7メイルほどの大型ゴーレムが衛兵を務めていた。
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