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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十七話 将来図
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て、様々な風聞が飛び交っていると聞く。これ以上無責任な噂が飛びかうのは、軍の統制上好ましい事ではない。この際、真実を卿らに話すべきだと思う」

「今回、私が戦闘中に倒れ、指揮が取れなくなったことは残念だが事実だ。私は心臓に持病を持っている」
低く重い元帥の言葉に声にならないざわめきが起こった。宇宙艦隊司令長官が自らの病を口にしたのだ。その意味は大きい。

「私が倒れた間、遠征軍の指揮を取ったのは司令部参謀のメックリンガー少将だ。彼が指揮権を得るには、噂どおりヴァレンシュタイン中将によるいささか非合法な工作が有った。だがそれ無しには帝国軍が勝利を得るのは難しかったことも事実だ」

非合法な工作か……。それ無しには勝利を得るのは難しい。微妙な言葉だ。しかし、軍からの追放は無いのではないだろうか?

「ヴァレンシュタイン中将からは責任を取りたいとの言葉があった……。今回の行為はいかなる理由があろうと許されるものではない。これを許せば軍の統制が保てなくなる。それ故自分を軍から追放して欲しいと……」

“追放”、“しかしそれは”、驚愕に満ちた声が上がる。そうだろう、私も聞いたときは思わず声を荒げたのだ。
「静まれ」
元帥がざわめきを静める。

「中将を軍から追放する事は出来ぬ。中将を追放すれば、あれを恨んでいる貴族どもが中将を殺そうとするだろう。そのような事は出来ぬ……」
苦い表情と共に元帥が言葉を続ける。言葉にも苦味が溢れているようだ。

「私は卿らに謝らなければならぬ。私は自らの病を軽視していた、いや、軽視しようとしていた。自分が未だ軍人として第一線で戦えると思いたかった……」
誰でもそう思うだろう。まして元帥ほど前線で栄光に包まれてきた人間なら尚更だ。

「そしてそのことが、戦闘中に病による指揮能力喪失に繋がった。私の愚かさにより、遠征軍六百万の兵士を危険にさらしてしまった。そしてその危険性に気付いたヴァレンシュタイン中将さえも死に追いやろうとしている……」
元帥の言葉に会議室は寂として言葉も無い。ただ元帥の言葉だけが流れていく。

「今回の事、原因は全て私に有る。私の愚かさ、傲慢さが軍に混乱を招いた。私は責任を取って、軍を退役する事にした」
「!」
辞める? ミュッケンベルガー元帥が辞める? 何かの間違いではないのか?

「な、お待ちください元帥」
「シュターデン、これはもう決めた事なのだ。六百万の兵士を危険に曝すような男に宇宙艦隊司令長官を務める資格は無い……」
元帥の言葉には自嘲の響きがある。元帥は本当に辞めるつもりだ。

「ヴァレンシュタイン中将についてはこの場ではなんとも言えぬ。軍務尚書とも相談せねばなるまい。だが中将の言うとおり、これを許せば軍の統制が保てなくなる恐れがある、何らかの処分
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