第四話 初出撃
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に落下していく中、紀伊は無我夢中だった。二人は左翼から大きく迂回して敵艦隊の背後に回った。
「主砲、砲撃開始!」
榛名が右手を振った。たちまち35,6センチ砲が火を噴き、重巡洋艦に命中して大爆発を起こした。なにやら敵の砲の残骸のようなものがあたりに飛び散って、海面にチャボンチャボンと落下していくのが見えた。紀伊はそれを見て体に震えが走った。
(怖い・・怖い!・・・怖い!!でも・・でも、やらなくちゃ!!!)
紀伊は覚悟を決めた。
(大丈夫。あんなに練習したもの!きっと・・・きっと・・・・!!)
砲塔が波しぶきをかぶりながら旋回し、敵に狙いをつける。紀伊の左手が前に突き出された。その途端彼女の眼がきっと敵艦を捕捉するかのようにらんだ。
「全主砲、斉射!!目標軽巡洋艦!!テ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
轟音とともに紀伊の41センチ3連装主砲が火を噴き、密集するように打ち出された巨弾がまっしぐらに軽巡にむけて飛んでいった。
(お願い!!!当たって!!!)
その直後、大音響とともに軽巡が爆炎に巻き込まれた。海面が衝撃に震え、大気が乱れたが、それがおさまると軽巡の姿は消えていた。
「紀伊さん!!やりました!!」
榛名が頬を紅潮させて手を叩いた。紀伊は呆然としていたが、やがて気を取り戻すと榛名を見た。
「わ、私・・・・私・・・・・。」
「ええ。紀伊さんはとても凛々しかったです。とてもかっこよかったです。榛名、感激しました!」
榛名はにっこりした。紀伊は赤くなった。
「でも、無我夢中で何が何だか・・・・。」
「いいえ、紀伊さんの眼はずっと敵の軽巡に向けられていました。冷静だった証拠です。私、何十回も練習を重ねてきていらっしゃるのは利根さんたちから聞いて知っていました。体が覚えているんです。だから、もっと自信を持ってください。ね?」
「榛名さん・・・。」
紀伊は胸が一杯になってそれ以上何も言えなかった。
「敵艦隊、掃討完了しました。」
不知火が近寄ってきて報告した。
「敵の残存艦もありません。すべて撃沈しました。嵐の到来の前に撃破できて幸いでしたね。」
と、由良。そのとき紀伊は何かひっかかるものを覚えた。
「やりましたね。」
綾波が嬉しそうに言った。
「どうしました?」
考え込んでいる紀伊をみた榛名が尋ねた。
「あ、いえ・・・少し気になることがあって。」
「なんでしょうか?」
「深海棲艦は嵐でも航行できるのでしょうか?」
榛名は一瞬目を見張ったが、首を振ってこたえた。
「いえ。それはないと思います。深海棲艦も嵐は苦手としているはずです。そういう意味では私たちと同じようなものです。」
「おかしいと思いませんか?」
紀伊は榛名たちを見た。
「私が聞いたところだと、この近海に出現する深海棲艦は遥か南方から来ると
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