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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第四話 初出撃
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た。一人ではなかなか上達しないものですもの。」
「わたくし、たち・・・・?」
その時上り始めた朝日を背にして一人の艦娘が滑ってきた。
「お〜い、熊野〜〜〜。」
「あら、鈴谷さん!」
熊野が手を振った。
「準備できたよ〜〜〜。あ、紀伊もおはよ〜〜〜す。」
「お、おはようございます。あの、準備って・・・・?」
「もちろん標的だよ。今日はまず基本的な砲撃の練習から始めようってみんなで話してたんだ。」
「お〜〜〜〜〜い!!」
ひときわ大きな声がした。振り向くと海に突き出した埠頭に利根と筑摩が立ってこっちに手を振っている。
「紀伊、準備はいいか〜〜〜!!」
紀伊はみんなを見まわした。利根、筑摩、それに鈴谷、そして熊野。最初はどこか距離を置いていた二人までもこうして自分のために準備してくれている。紀伊はすばやく目をぬぐった。
「ありがとう・・・ありがとう・・・ございます。」
「お礼を言うのは上達してからですわ。さ、落ち着いて。まずは停止射撃から始めましょう。」
「はい!」
紀伊は強くうなずいた。
「いいぞ〜〜〜〜!!」
利根の叫びに紀伊は艤装を振るわせて暁の水平線をゆっくりと滑りだしていった。


その1週間後――執務室にて。提督のモノローグ――。

 先刻は大変だった。紀伊の奴を呼び出して、第7艦隊に配属の指令を出したら、奴は真っ青になってぶっ倒れそうだった。居合わせた鳳翔が慌てて抱き留めて水を飲ませなかったら、俺は救急車を呼ばなくちゃならんところだった。いったいどんだけ繊細なんだ?
「無理です!私・・・・まだ実戦経験もないですし、砲撃も艦載機の離発着も攻撃も何一つまともにできてなくて・・・・。」
やめてくれ、美人がそんな情けない顔をするのは俺は見たくはない・・・と思わせるほど奴は青ざめていた。可哀想だったが、こちらも奴を遊ばせているほど余裕があるわけではない。平時ならともかく先日のように内地にまで深海棲艦が入り込んでくる状況だ。一日も早く実戦に使える艦娘になってほしい。それにこれはどの艦娘も通ってきた道だ。
俺がそういうと、奴は絶望感に顔を暗くしたが、やがて覚悟を決めたらしくうなずいた。弱弱しかったけれどな。
 実を言うと奴が朝晩練習しているのを俺はひそかに見て知っている。それに航空巡洋艦娘の奴らが自発的に手伝っていることも知っている。だが、俺はそのことは一切言わなかった。言わなかったけれど、少しだけ奴を見直した。ただ悲嘆に暮れてばかりいる引っ込み思案の艦娘じゃないってことだ。こういうやつはどんなに憶病でもどっか心の底に一粒の勇気ってやつを持ち合わせているんだ。
 後、奴が一つお願いをしてきた。自分が戦艦なのか空母なのかわからないから、それを教えてくれというんだ。だが、俺にもこたえられなかった。なぜか?
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