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第十六話その2 皇女殿下の亡命生活なのです。
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り、元帝国軍人で今は商船の船長をしている旧友に頼み込んだ。奴は驚いた顔をし、この問題は自分では扱えないと言い、大使館に駆け込むように言った。俺たちは迷った。今素性を明かしても大丈夫なのか?アルフレート・ミハイル・フォン・バウムガルデン様は大丈夫だろう。なんといっても、帝国では貴族であったが、財産を没収され、同盟に亡命するという話は、よくあることだ。同盟側もそれを受け入れて厚遇してきている。
問題は皇女殿下の方だ。話を聞くと、皇女殿下のご出生のニュースはフェザーンはおろか、同盟にまで広まっているという。なんということだ。こんな時に皇女殿下のまま亡命させるのはいかがなものだろう。
結論は出てこなかった。ただ、アルフレート様は憂いがちな顔でこうおっしゃられた。「仮に皇女殿下が帝室に連なる者ではなかったということになれば、皇族として厚遇してきた同盟の態度は一変するに違いなく、その風当たりは相当に厳しいものになるだろう」と。確かにそれは一理ある。同盟の態度の裏返しの早さは有名なのだから。
話し合った結果、皇女殿下はバウムガルデン公爵家の縁続きということにし、アルフレート・ミハイル・フォン・バウムガルデン様の婚約者という設定にしておいた。我々は皇女殿下に謝ったが、思いのほか皇女殿下は気にしておられなかった。むしろすまなそうに「苦労をかけるの」とおっしゃっていた。お一人でこんな環境に流され、心細かろうにけなげな方だ。この俺、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイトが、一命を賭して守り抜かなくては。
手続きが済み、こうして旅立つことができるようになったのは、10月の終わりごろだった。あの騒動勃発からまだ半年ほどしかたっていないが、ずいぶんと長く生きてきたような気がする。
アルフレート・ミハイル・フォン・バウムガルデン殿下もよく皇女殿下に尽くしてくださっている。こうしてみるとお二人は兄妹というか何か目に見えない親近感を持っているかのようだ。
自由惑星同盟か、果たしてどんなところなのか。一部の人間からは自由と理想の国と話を聞き、一部の人間は腐敗した民主政治とやらの集大成なのだと聞く。どちらが本当の姿なのか、それともどちらも誤った認識なのか。今の俺には想像もできない。
■ カール・ロベルト・シュタインメッツ
アルフレート様にお仕えし、まさか自由惑星同盟に亡命することになるとは思わなかったが、この選択を悔いてはいない。アルフレート様も皇女殿下も未だ幼い身、そんな中亡命を決心されるとは驚いたが、さぞかしご心痛だろう。我々が支えなくてはならない。
こんな時にファーレンハイトがいてくれるのは心強い。私一人では心もとないが、二人ならばどうにかなるはずだ。だが、向こうに行けば男手だけではだめだろう。皇女殿下に置かれてはせめて侍女をつけたいもの
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