第15話『休日』
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振り返ることができない。あまりの恐怖で、首が回ろうとしてくれないのだ。金縛りを受けているみたいに。
『ようやくか。待ちくたびれたよ』
待ちくたびれた? 俺は誰とも会う約束なんてしていないはずだ。一体何を待っている? そもそもこいつは誰なのだ。
『今日は曇りみたいだね』
曇り、確かにそうだ。空一帯は雲で席巻されている。
でも、それがどうした。天気なんて関係ない。俺が気になることはただ1つ・・・
「誰、ですか…?」
『……』
俺が声を振り絞って出した質問に、謎の人物は何も答えない。その瞬間、俺の中で恐怖心よりも好奇心が打ち克った。
「このっ…!」
その瞬間金縛りが解け、俺は勢いで身体ごと振り返る。そしてその存在を視界に捉えた・・・はずだった。刹那、目の前の景色がぐにゃりと歪む。徐々に意識が遠のいていくのを感じた。
『明日は、晴れるといいね』
「待て…!」
目が眩む中、歪んで原型を留めていないその影へと俺は手を伸ばす。しかし、その手が何かを掴むことはなかった。
*
「はぁ……」
俺はベッドの上でボンヤリしていた。
先程のは“夢”。それも入学式の日の朝に見たものと同じ景色の。そこまで思い出した。
ただ1つ、違っていた。あの人は一体・・・。
どうやら俺は昼食を食べた後、部屋で昼寝をしたようだった。その証拠に、窓の外は青空ではなく夕焼けが目立っている。
「もう夜なのか」
時が経つのは早いものだ。どうせまた・・・
「お兄ちゃん、晩ご飯の時間だよ!」
智乃がドアをこじ開け入ってきた。
予想通り。全く、完全に見たことのある光景だ。こういうのを『デジャブ』と言うのだろうか?
いや、どうでもいいや。
「今行くよ」
俺はそう返し、すぐさま夕食を食べに1階に向かった。
*
夕食を終えた俺と智乃は、ソファに座ってテレビを見ていた。今日は久しぶりに智乃と2人きりで過ごしたな。そのせいか彼女は一日中元気で、おかげでこっちは何もしてないのにクタクタだ。
「母さん達はまだなの?」
「帰りが遅くなる、って電話ならあったよ」
子供2人を家に置いてどこまで行ってるんだよ。ホントに仲が良いな。良すぎるくらいだ。
「ねぇお兄ちゃん、一緒にお風呂入らない?」
「ぶっ!!」
智乃の唐突な発言に思わず噴き出してしまう。
こんなことを言われるのは、ここ1年はなかったのだが…。
「お母さん達がいないから、ね?」
「い、いやいいよ。そんな歳じゃないし」
可愛く訴えてくるも、俺にはそん
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