第15話『休日』
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「え、良いじゃん。食べてよ」
「何でねばるんだ。わかった、食べるよ」
「ちょっと待っててね」
別に智乃の卵焼きが不味い訳じゃないから、食べても何も問題無いのだが、ただミスマッチだと思う。
*
「できたよ〜」
「お、綺麗だな」
目の前に出されたのは、綺麗に整えられた卵焼きだった。黄色く輝くその姿は、中々の貫禄を醸し出していた。
「フォークよし、お茶よし。いただきます!」
「いただきます」
智乃は俺の隣に座った。
そういや智乃の卵焼きって懐かしいな。最後に食べたのは結構前になるのかな…。
「どれどれ?」
俺は一口卵焼きを食べる。
その瞬間頭に何かがビビッと来た。
「どう?」
智乃が期待の表情でこちらを見てくる。俺は率直な感想を返した。
「メチャクチャ美味しいじゃん」
そう言った途端、急に体が重くなった。
体調が悪いからではない。ただ、智乃が俺に抱きついてきたのだった。
「…ってて。危ないだろ智乃」
「へへっ」
あまりの勢いに椅子から転げ落ち、少々痛い目に遭う俺。
だが智乃は、そんな俺の注意も笑顔で弾き飛ばした。
「早く飯食わせてくれよ」
「ごめんごめん」
ようやく智乃が俺から離れ、自分の席に戻った。
何か今日は、休日なのに疲れそうだ。
*
「あれ?」
俺は目の前の光景に目を疑った。
次第に、草木の独特な匂いが鼻をつく。
「草原?」
俺はいつの間にか、草原の真ん中に立っていた。
終わりなんか到底見えない。地平線の彼方まで続いている。
見上げると空は雲に覆われており、太陽は隠されて見えなかった。
「何でこんなとこに…。誰か、いないのか…?」
俺は問いかける。だが周りに人の姿は無く、返ってくるのはそよ風の感触のみ。花と草が一面に広がり、俺だけが異端な存在だった。
「マジかよ…」
どうしてこうなったのだろうか。
先程まで智乃と昼食を食べて、そして自分の部屋に戻ってから・・・どうしたっけ。
しかし、この風景だけは不思議と覚えている気がした。以前どこかで──
ガサッ
──!?
不意に後ろから足音がした。背筋に嫌な汗が流れる。
少なくともさっきまでは人どころか、植物以外の生き物自体いなかった。それなのに、誰かが俺の後ろに急に現れた。これほど怖いことがあるだろうか。
『やぁ』
「っ!?」
その存在は声を掛けてきた。若い男の人の声だ。まるで優しく語りかけるかのような、穏やかな口調である。
だが、俺は
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