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歌集「春雪花」
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 夜の風に

  君を想いて

    語りなむ

 過ぎにし春の

   いかに侘しか



 夜も暖かくなり、まるで冬が幻だったかのようだ…。

 心地よい風の吹き抜ける山里…彼のいない場所…。
 風はどこまでも自由に吹きゆく…。

 なぁ、風よ…恋しい人の側に居れない私は、一体どうしたら良いのだろうな…。

 答えることはく、風はただ自由に吹き抜けて…何処かへと消えてゆく…。

 彼のいない春は去りゆく…淋しさだけを私に残し、私は風へと愚痴るだけ…。



 未だ恋し

  君の名呼びし

   晩春の

 かたぶく月を

    独り眺むる



 未だに忘れることも出来ず…彼を想っては溜め息をつく…。

 夜は淋しさが増し、つい…彼の名を口にしてしまう…。

 今…何をしているのだろうか…?

 考えても詮ないことを考え見上げれば、山の端に月が落ちようとしている…。

 眺めるは…私、ただ一人切り…。





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