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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
第三話 マールバッハ一門へようこそ
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考えた。
 ロイエンタールがマールバッハ伯爵になるという展開は、俺に髭に毒されるどころじゃない危険にも気付かせてくれた。
 考えてみれば、自ら意地悪だ外道だなんて言う黒幕が原作通りに歴史を進めるはずがない。俺は今まで父上が乗馬仲間や射撃仲間として髭を連れてくるレベルのこと、無理矢理髭と結び付けられることばかり考えて恐れていたが、パスカルがそんな事で満足するような小悪魔ならとっくに実行してけらけらと笑って趣味の悪い遊戯をおひらきにしているだろう。
 それをしないということは。原作にない大事件の一つや二つ起してやろう、歴史をひっくり返してやろうと企んでいるからに違いない。パスカルにはラインハルトがゴールデンバウム王朝打倒を志さないという歴史を書くことも可能なのだ。もしそうだとすると原作通りの人生航路を歩もうとしても、バッドエンド一直線になるだけだろう。
 では、どうすればいい?
 その日俺は起きている間ずっと、いやベッドに入ってからも意識の続く限り、人生の勝利者になる方法を思いめぐらせた。
 だが転生前の人生で進路に悩んでいた時と同じように、これだという答えは見つからなかった。
 そして、俺はまたしても奴の悪戯に歯噛みさせられることになった。
 衝撃の情報から数日後、俺がいや生き残るための最適解を導き出すより早く奴は芝居の脚本あるいは銀河の歴史を書き直し、新たな舞台の幕を上げてくれたのであった。
 「喜べ、アルフレット。月が変わればお前は若様だぞ」
 五月のよく晴れた日の夕方、広い食堂で貧乏貴族などよりよほど豪華な食事を囲みながら、上機嫌の父上が口にした言葉に、俺は今度は椅子から転げ落ちそうになった。
 嫌な予感に背筋の皮膚が粟立つ。
 俺は恐る恐る父上に尋ねてみた。
 「父上、若様とはどういうことですか?」
 「わしが懇意にしているロイエンタール男爵がマールバッハ家の御隠居様を通じて取り計らってくださったのだ。わしは来月、帝国騎士に叙せられることになった」
 答えは予想していた通りのものだった。以前からの噂の実現。帝国騎士フォン・グリルパルツァー家の誕生である。それもマールバッハ家、没落しかかっているとはいえ門閥貴族からの引き立てで。
 「まあ!あなた!おめでとうございます!」
 「おめでとうございます旦那様」
 長年の夢が叶って喜ぶ母上や執事のマックス、アルノルトたちが父上にお祝いの言葉を述べるのを聞きながら、俺は心の中で思い切りテーブルを叩きつけた。
 やられた。
 マールバッハ伯爵家からの推挙で帝国騎士に叙せられたということは、グリルパルツァー家は帝国騎士叙爵と同時にマールバッハ伯爵家の縁者にもなったということだ。門閥貴族にとって縁者とは直接の家臣ではないものの家臣同然、時と場合によっては家臣以上に便利に使える道具
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