第三話 マールバッハ一門へようこそ
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俺が髭回避…生き残り計画の検討を開始してから六年後。
練りに練った生き残り計画の第一段階を実行に移そうという時期になって、俺は俺をこの世界に転生させた外道の悪辣さを見くびっていたことを思い知らされた。
「惜しむらくは直系でないとはいえ、血筋には違いない。──家もルドルフ大帝以来の帝国騎士。ここ一代二代の間に爵位を買ったような成り上がりとは格が違う。ようございましたなあ」
『な、なんだってーーーっ?』
ボール遊びのボールを探して客間の外をうろちょろしていた俺は耳に飛び込んできた情報に、頭を殴られたような衝撃を受けて見つけたばかりのボールを取り落とした。
「アルフレットぼっちゃま!」
びくん、と音が聞こえそうなくらい身を固くした俺に、追いかけてきた使用人のアルノルトが心配そうな目を向けた。
だが俺はしばらく、アルノルトがそこにいることにさえ気付かなかった。巨体のアルノルトのさえ一瞬認識できなくなるほど飛び込んできた情報の衝撃は大きかった。
マールバッハ伯爵が外孫を養子に迎えた。父方の身分はやや不足だったが、伯爵が抱えていた借金を一気に半減させるほどの巨額の持参金が物を言い、将来の返済を確実なものにする援助の約束が決め手になったらしい。宮内省、典礼省にも伯爵名義で多額の献金がなされていたらしく、問題は何も起こらなかった。そして帝国騎士だった父親は伯爵によって男爵に推挙され、マールバッハ一門の末席に加わった。
マールバッハ伯爵の外孫、といえば、思いつくのはただ一人しかいない。ロイエンタールである。
俺のような比較的開明的な階級に育った人間にとって、やがて来るべき帝国の内紛でラインハルト陣営につかないという選択はない。ロイエンタールが門閥貴族の当主になり、ラインハルト陣営に参加しないとすると、俺の計画は大きく狂ってしまう。ラインハルト陣営の弱体化は避けられない。早い段階から髭は引き立てられるだろう。髭の比重が増せば、髭の下につけられる可能性がますます高くなる。
つまり、毒される確率死ぬ確率も高くなる。
『俺様は外道だかんなー、壊せるもんは何でもぶち壊してやるぜえー』
どこからか、時の神の弟の芝居が気に入ったらしいパスカルの馬鹿笑いする声が聞こえた気がした。
「旦那様はお声が大きくていらっしゃるから…さあぼっちゃま、旦那様は大事なお話がおありですから、お邪魔になってはいけませんよ。お部屋に戻りましょう」
俺が父上の声の大きさに驚いて硬直していると思った丸顔のメイドとアルノルトに連れられて子供部屋に連れ戻されながら、俺は頭脳をフル回転させて計画の修正に取り掛かった。いや、修正なんてレベルじゃない。一から、ゼロから練り直しだ。
バッドエンドの可能性は捨てきれないが、ラインハルト陣営につく以外の選択肢もいくつも
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