Vivid編
第八話〜蒔かれた種〜
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「……」
家に向けて歩いていた足を一旦止め、彼は近場の壁に背を預けるようにして寄りかかると、ゆっくりと口を開いた。
「ここ最近、管理世界内の山間部の施設が襲撃される事件が散発的に起こっている」
ライは以前、管理局のデータベースにハッキングした際にその情報を知った。
そして、その事件についての報告書の内容をコピーし、その複製データは今ライの話し相手である二機の中に保存されている。
「襲撃を受けたのはそれなりに重要な施設もあれば、特に取るに足らない施設もあり、一見して共通性は無いように思われる」
二機は自身のデータベース内に保存されているデータを解凍しながら、ライの言葉と報告書の内容を確認していく。
「だが、一貫して直接的な被害にあったのはその施設ではなく、そこを防衛している警備部隊」
二機の中に被害者である防衛に出た魔導師のリストがピックアップされる。そこには低くてCランク、高くてAAランクの魔導師の名前があった。
「襲撃は夜間であり、敵はオプティックハイドと思われる光学迷彩で姿を隠していたため、しっかりと姿を確認した人間はいなかった。だが、戦闘していた魔導師の証言から人間の倍か若しくはその三倍の大きさだったらしい。そして極短時間の戦闘時間を終えるとすぐに撤退する」
ライは念話による思考発声でも二機と会話できるのだが、今はあえて声に出すことで自身の考えをまとめていた。
「それと現場検証を行った写真の中に、施設のコンクリートに残るゴムの焼けた後が写っていた」
その写真の中にはコンクリートだけでなく、土の地面も写っていた。そちらには幾つもの窪みが帯を引き、一種のアートのようになっている。
『『…………まさか』』
ここまでの説明で予測できたのか、二機の声が漏れた。
ライはそれを無視し、自分の中の予測を口にする。
「“悪夢”は広がった」
ライの言葉は路地の闇に染み渡る。くしゃりと、自身の前髪を右手で握っていた。自然と左手に力が入る。そして噛み締めるように口を引き結ぶその姿は、何かに苦しんでいるように見えた。
そんな中、ライの傍を小さな光が瞬く。
否、正確にはライがこれまで寄りかかっていた場所に迫っていた小さな光を、ライが壁から背を離したことで偶然回避したのだ。
「――――壁が?」
視覚が拾ったその瞬きと、石の砕けるような小さな音で反射的にそちらに視線が行く。
光が飛んできた方に意識を向けつつ、ライに見えたのは光が接触したと思われる部分が綺麗に抉れている壁であった。
(部分的な分解……消失?確か、似たような魔法が…………イレイザーだったか?)
状況を理解した瞬間、目覚めてから初めて戦闘用の意識に切り替えられる
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