Vivid編
第八話〜蒔かれた種〜
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扉の向こうからライをこの部屋に連れてきた女性――――レジアスの娘であるオーリスに自身の座る車椅子を押されながらそう訪ねたのは、聖王協会の病院に入院しているはずのゼスト・グランガイツその人であった。
「………………お前の言うとおり……どこか危うい小僧だな、アレは」
ゼストからの質問に対し、未だ疲れた表情を見せるレジアスはそう切り返した。
今回、ライからのメールを受け取ったレジアスは、面識があることを知っていたゼストに連絡を入れていた。そして、いくつか相談をした結果、当日にゼストもレジアスの家で待機しておくことにしたのだ。
「それで何の話だったのだ?」
ゼストの疑問に答える代わりにレジアスは机の上に広がった資料を大雑把に纏め、二分させるとそれぞれを娘と友人に手渡した。
そこに答えがあると察した二人は、お互いに資料を読み流していく。
読み込んでいく二人の表情の変化は劇的であった。
「こ、こんな無茶な――――ッ!」
「…………」
管理局で文官をしているオーリスは、堪らず声を上げそうになる。その表情は怒りよりも焦りや驚きの色が強い。
一方でゼストの方はただ無言であった。
「お前の中で無茶であると判断した考え、疑問や質問をしたところであの小僧は涼しい顔で具体案やメリット、デメリット付きで応答できるだろうな」
そんな娘の反応にレジアスは幾分か余裕を取り戻したように、どこ確信している意見を口にする。
その一方で、どこか悲しい表情を浮かべているゼストにレジアスは視線を向けていた。
「……早々に生き方を変えることはできないということか」
ポツリと呟かれたゼストの言葉は、他の二人の耳にも確かに聞こえいた。
しかし、その言葉とゼストの表情から何かしらの事情があることを察した二人は、付き合いの長さもあってか特に追求することはしない。
「頑固さだけで言えば、儂らも相当なものだ」
ゼストの呟きにそう返したレジアスの言葉は、娘であるオーリスを苦笑させた。
クラナガン・裏路地
来た時のようにモノレールには乗らず、歩きで帰路についたライ。
その足は自然と人のいないような場所を選びながら進んでいく。だから、いつの間にやら、ライは街灯の光も届きにくい薄暗い路地にいた。
「…………時期尚早だと思うか?」
ぼそりとライの口から言葉が漏れる。それはゲイズ邸から出てから、初めての発声であった。
『…………正直に言うのであれば』
『何か焦る原因があるのですか?』
その声に答えたのは一本のネックレスの輪に通され、ライの首にかかる二機のデバイスであった。ライの問いかけにその二機は控えめながら肯定の意を返し、同時にその理由を問い質す
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