Vivid編
第八話〜蒔かれた種〜
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何故…………お前ではなく儂なのだ?」
絞り出すようなその言葉に、ライは真っ向から切り返す。
「およそ百年以上続いた管理局の魔法主義社会。それを変革させようと動いたのが貴方だったからです」
「だが、それは――――」
「失敗しましたか?だけど、社会が、人が、時代が求めるのは危うさを生み出す正しさでも文化でもない。確固たる何かを確信させるだけの新しいモノだ。それに…………」
一瞬口にするのを躊躇いそうになるが、意を決するようにライは言葉を続けた。
「僕がトップに立てないのは、自身の大切な存在が既に管理局、そして聖王協会の両方に在籍している。可能性は低いと思いたいが、彼女たちを交渉材料に譲歩の姿勢をしてしまえばそもそもこの組織の最在意義が瓦解する」
レジアスは再び黙り込む。
ライの友人関係はごく限られた範囲でしかない。何故なら、ミッドチルダに彼が訪れてから接触を行ったのはJS事件時の機動六課の局員と、精々入院していた聖王協会の人間たちぐらいだ。
そんな調べれば直ぐにわかってしまう人間関係を人質に取られでもすれば、ライにとっては十分すぎる弱点になる。ルルーシュにとってナナリーがそうであったように。
そして今この瞬間、その弱点をライはレジアス・ゲイズに明かしたのだ。未だライにとって味方になるかどうかも分からない人間である彼に。
それだけの覚悟と意志を見せ付けられたレジアスは自身でも気付かないうちに、ライのその覚悟を宿す、蒼の瞳に引き込まれるような錯覚を覚えていた。
「罪、罰、後悔。そんなもので平和など創れない。それでできるのは自己満足だけだ。正しさで成すべきことができないのであれば、僕はいくらでも間違えます。成し遂げられない正義などいらない。成し遂げられるのであれば、僕は悪にも、それを討つ巨悪にもなる」
そう言い切るとライは、レジアスの言葉を待つ。
自身が語るべきことはまだ多くある。組織を成立させるための年単位の量の時間単位で細かいタイムスケジュール。組織内の運営。そして資金面も当然のように話さなければならない内容だ。
だが、今必要なのはそれではない。
それを成そうとするべき覚悟と意思。それをライは求めていた。
「少しだけ――――」
「……」
レジアスは口を開く。だが、その目はライの方を向いてはいなかった。
「少しだけ時間をくれ。一週間でいい」
そう言うレジアスの表情は初めて見たときよりも幾分か老けて見えた。
「また来ます」
そう言い残すと、広げた資料をそのままにライは鞄を掴むとその部屋を静かに退室した。
ライが退室してから数十分か、若しくは一時間は過ぎたであろう頃に、再びその部屋の扉は開かれた。
「彼はどうであった?」
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