殿下、四畳半でございます
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「で、なんだこの馬鹿でかい部屋は」
「は。殿下の仰せの通りの四畳半でございます」
間
「畳4枚と、半分。そういう意味でか」
「―――は」
「この畳一枚で、32平米はあるな」
「―――おみそれいたしました」
「ビンゴか」
「ビンゴでございます。お父上の命により制作した、特注品でございます。材質も沖縄産の最高級藺草を」
「ということはこの部屋は144平米あるわけだ」
「お見事な暗算でございます」
執事の、乾いた拍手が広い空間を満たした。真新しい藺草の香りが、くどいほど漂う。
「ロイヤルスイートくらいの面積はあるな。144て」
「………畏れながら」
「朕は、民草と共に、民草と同じ環境で、そして同じ学び舎で学び合いたい、そう申したのだ」
「………」
「民草の学生が住まう借り部屋といえば、四畳半であろう!四畳半に住まずしてどうして、民草を理解できよう」
「………四畳半でございます、殿下」
「お前、朕に何言われてもそれで通せって父上から命令されてるな」
「………」
「てかよくこんなものを作ったな。こんな茶番に巻き込まれた畳職人もたまったものではなかろうに」
「………畏れながら申し上げますが」
間
「ご自分を『朕』と仰るお方が、真の四畳半で暮らそうというのが、どだい無理な話でございます」
「ほう、知ったような口を利く。そなたはそんなにも四畳半に詳しいのか。ならば朕はこれから俺と名乗ろう」
「………」
「……なんだ、その目は」
「殿下、こちらへ」
数刻後
「こちらでございます。靴を脱いで、お入りくださいませ」
「そなたはまた…何も分かっていない」
「………」
「また朕を贅沢な建物に連れ込もうとしているのだな!」
「……何故、そのようにお考えになりましたか」
「ひどく広く贅沢なエレベーターに連れ込んだではないか!見よ、風呂も、トイレも、キッチンまでもついておる!最上階に着くまでに、どれほどの時間を要するタワーなのだ」
「ほう、なるほど」
「奥に座しているのは、エレベーター専属の下男であるな!えぇ、忌々しい。父上は何が何でも朕に贅沢をさせなければ気が済まないらしい!」
「……これが、四畳半でございます」
「―――は」
「殿下が高級エレベーターと仰ったこの一室が、殿下が望む、真の四畳半でございます!」
「………なんということだ!!!」
「………なんということだ!!!」
青年が、がくりと膝をついた。
妙に身なりのいい青年と、蝶ネクタイのじじいが突如俺の部屋に闖入してきたかと思いきや、高級エレベーターがどうとか下男がどうとか言い散らして膝をついたり手で顔を覆って泣き出したりし始めた。
「あ、あの…なに?あんたら」
「さあ、どう
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