第53話 千駄ヶ谷の名医
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を左右に振った。
「医者の先生には、おそらく信じられないかもですが、わしゃ、確かに死んどります。ですが、ある男に蘇えさせられたんぜよ」
龍馬はにこりと微笑んで良順に言った。その笑顔は確かに人懐こいところはあったが、良順は何故か不気味な何かを感じていた。
「もし、それが本当のことならば、一体、だれがそんなことをやってのけたというのかね?死んだ人間が生き返ることなど、医学的に不可能だ」
「先生は、武市半平太を知っちゅうがか?」
「確か君と同じ土佐のものだとは知っているが、たしか武市殿もなくなっていると聞いてはいるが」
良順はまさかと感じ始めていた。
良順にとって、それは信じがたいことだった。もし、それが本当であるならば、神への冒涜であり、そんなことができるのは魔人でしかない。
「その武市半平太も生き返っているぜよ。それとわしが知るとこだと岡田以蔵、そして、高杉晋作。あと2人は蘇らせると、わしは踏んどります」
龍馬は眼を見開いている良順を見つめて言った。
「その二人と君と後2人が蘇るのか?それは確かなのか?そんなことが出来る者は一体誰なんだ?」
良順は信じ固い事実を受け止め、龍馬に疑問を投げつけた。
「これは、わしの見解なんじゃが、おそらくその術。あっ、あえて術とよびますき。その術を使っているのは、武市半平太本人。そして、なぜ、あと二人と断言したのは、武市さの左の指が、全部なくなっていましたきに」
「な、なに?左手の指が全部?」
「はい、おそらくはわしら以外のもう一人は蘇っていると踏んどります」
良順は龍馬の答えに驚愕した。
(指を媒体にして死人を蘇らせる方法など聞いたことない。一体、どんな方法なのだろう?)
医師としての問いが頭をよぎった。
「そして、武市さの背後には、もっとオドオドしい化け物が存在しとるんです」
「それは、誰かね?」
良順は、背中に冷たいものを感じて一つ身震いをした。
「天草四朗時貞という人物ぜよ」
「そんな馬鹿な!!天草四朗だと!!」
良順はあまりにも驚愕し、目が飛び出んばかりに見開いた。
「先生も勝先生と同じ顔をしてるぜよ。天草四朗とはそげな大物なんかの?」
龍馬はその表情をみて首を傾けた。
「坂本君、君だって九州を拠点として活動をしているのだから、名前ぐらい聞いていると思うが」
良順はそんな龍馬の表情をみて、飽きられたようにため息をついた。
「だが、もし、それが本当に天草四朗ならば、そんな妖術を使いこなせることが出来るやもしれん」
良順は、考え事をするように腕を組み顎を摩った。
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