第三話 初対面
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すぎなのではないか?」
「そこが加賀さんのいいところでもありますから。」
二人の会話はどこか遠くの世界でされているように思える。紀伊は深い物思いに沈みこんでいた。逃げるようにその場を離れた紀伊だったが、加賀の言葉は大きな棘となって深々と胸に突き刺さっていた。
あなたの力、よくわかった。もういいわ。
もういいわ。その言葉にはこれ以上自分と関わるなという意思表示がはっきりと示されていた。もっと掘り下げれば、自分の様な非力な艦娘が栄光の第一航空戦隊の中核の自分と向かい合うなと言っているようにも聞こえた。つまり自分は否定され、拒絶されたのだ。
そのことが無性に悲しく、空しかった。
「・・・・・・?」
紀伊はふとききなれた音を感じて、顔を上げた。そこには広い海が広がっていた。いつのまにか3人は防砂林を抜けて砂浜に降り立っていたのだ。
「・・・・・・・!」
紀伊は息をのんだ。
そこは見渡す限り青い水平線が広がり、やや傾きかけた太陽が真正面から光を放っている。ここに座ってずっと空、そして海を見ていたいと紀伊は思った。特に鮮やかなコントラストをなす黄昏の空と海が紀伊は好きだった。徐々に水平線の彼方に消えていく太陽に照らされた雲そして海は宝石にも負けない輝きを色彩を変化させながら放ち続け、そして闇に沈むのだ。次第に太陽が消えていく中、限りある時間を精一杯あがこうとするように光り輝く空と海。その切ないほどの美しい輝きが紀伊は好きだった。
今でさえとても綺麗なのだ。ここからならきっと今まで見たことのない美しい黄昏の光景が見れるだろう、紀伊はそう思った。
「きれいでしょう?」
目を見張っている紀伊に筑摩が微笑みかけた。
「ここは艦娘のプライベートビーチじゃ。今は誰もおらんが余暇があればみんなここにきて水遊びをしておるぞ。」
「そうなんですか?でも、あそこにいらっしゃるのは?」
紀伊の言葉に二人は海上を見た。
「む。あれは日向の奴か。ほう?」
利根が声を上げた。紀伊たちが見ている前で日向は海上を滑るように走り、走りながら砲塔を旋回させて砲撃し、次々と標的を撃破していく。標的自体も動いているから、ほぼ反抗戦に近いのに、日向はほとんど砲弾を外さなかった。
「流石じゃのう!」
利根が声を上げた。それに反応したかのように日向がちらっとこっちを見た。その瞬間紀伊は嫌な予感がした。あの眼は加賀のそれと似ていた。
案の定日向はこちらに向かって走ってきた。
「何か用?」
砂浜に立つ3人をじろと見まわした日向はそっけなく言った。
「いや、紀伊の奴を案内しておるうちにここについてしまったというわけじゃ。」
「ふうん・・・・。」
日向はちらっと紀伊を見た。
「先ほども見かけたが、あなたは41センチ砲を搭載する戦艦なのか?」
「え?
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