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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三話 初対面
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もしないその眼は燃えるように真剣だった。
「あれは・・・・たまたまです・・・・。」
「でも、撃破したのは本当ね?」
「ええ・・・・。」
加賀はつかつかと紀伊のそばに歩んできた。
「あなたの力、見てみたいわ。」
紀伊は目を見張った。
「おい、加賀――。」
「構わないでしょう?そちらが私の練習ぶりを無許可で見ていたのなら、こちらにも同じ
ことを要求する権利がある。」
「・・・・・・・。」
「それとも、臆したのかしら?」
紀伊は加賀の強い視線に耐えられなくなって視線を落とした。
「私は、正規空母では――。」
「私はあなたに聞いているの。あなたが何者なのか、そんなことはどうでもいい。」
紀伊はゆっくりと顔を上げた。やるしかなかった。このままでは見逃してくれそうにない。だが、あの時は無我夢中であり、どうやったのかも覚えていなかったから自信はなかった。
「わかりました。」
紀伊は練習場に立った。加賀は数歩下がって静かに紀伊の後姿を見つめている。利根や筑摩は心配そうに紀伊を見つめていたが紀伊はそれに気づく余裕もなかった。
 紀伊は右腕の飛行甲板を水平に前に突き出した。
「艦載機隊、発艦始め!」
甲板開口部が開き、艦載機が射出されて次々と飛び立っていく。
「目標、海上を移動中の標的A!!急降下爆撃、開始!!」
大空に舞い上がった艦載機は反転し、急降下して海上を移動する標的に向かっていった。
(お願い・・・・命中して・・・・!!)
紀伊は祈るような思いでかたずをのんで目をつぶった。直後に大音響、そして水柱の噴き上がる音がした。
「外れたわ。」
乾いた声がした。恐る恐る目を開けると、標的艦の前後左右に力を失った水柱の残骸が落ちかかっていくところだった。
「・・・・・・・。」
紀伊は呆然としていたが、戻ってくる艦載機を迎え入れねばならないことに気が付き、慌てて右腕を水平に突き出した。彼女は戻ってくる艦載機たちに対して何も声をかけられなかった。
 不意に後ろからじっとそそがれる視線を感じて紀伊ははっと振り返った。加賀が無表情でこちらを見ている。
「あなたの力、よくわかった。もういいわ。」
短い言葉だったが、紀伊を打ちのめすのに十分すぎた。

「そう気にするでない。」
利根が紀伊を慰めた。
「おぬしはまだここにきたばかりじゃ。吾輩たちも航空巡洋艦になった当初はカタパルトを扱うのに苦労したもんじゃ。のう、筑摩。」
「はい。誰しも最初からできることではありません。紀伊さんはまして艤装が完了したばかりだと聞いています。それなのにここまで3日間の間に航海できるようになったというのはとてもすごいことだと思います。」
「・・・・・・・。」
「それにしても加賀の奴は手厳しいの。奴も栄光の第一航空戦隊の中核たるプライドを持ち
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