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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三話 初対面
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えてきた。
「ほう?やっておるか。どれ・・・・。」
利根はひょいと飛び上ると、生け垣につかまって身を乗り出した。
「お、やっぱりそうか。よし。」
たっと地面に降り立った利根は踵を返すと、ずんずん歩き出した。
「あ、ちょっと!!そっちは――。」
「構わん構わん。せっかくの機会じゃ!」
利根が肩越しにそう叫ぶと、生け垣の間にある小さな道に入っていった。紀伊はためらっていた。
「もう!姉さんったら。・・・・仕方がありませんね。少しだけ付き合いましょう。」
筑摩に促されて、紀伊も入っていった。左手になにやら建物が立っている。そこは屋根と壁が3方に張り巡らされただけの簡素な作りの建物だった。ただ、横が非常に長い。3人が隅の小さな扉を開けて入ると、目の前に的の様なものがいくつもたっていた。弓道場のようだと紀伊は思った。だが、弓道場と違うのは、的が海上にもセットされていたり、空中を一定のコースで動いているものもあるということだ。
 それに向けて無心に弓を構える一人の正規空母がいた。
「しっ。」
利根が2人を制した。じっと3人は見守った。空気が止まっている。紀伊はそう思ったほど何も動かず何も音を発しなかった。
 突然、キリと弓が引き絞られ、バシュッ!と空気を切り裂く鋭い音とともに矢が放たれた。それは空中で炸裂し、10機ほどの飛行編隊に変化すると、上空の的に向けて襲い掛かった。凄まじい機銃掃射とともに的は木端微塵に打ち砕かれた。
「流石じゃの!」
利根が声を上げた。加賀はちらと3人を見たが、また目を的に戻し、矢筒から矢を抜き取ると、ゆるゆると構えた。
(綺麗・・・。)
紀伊はその姿に目を奪われた。
(綺麗・・・・あんなに静かなのに、それでいて盤石な構え。隙が無い・・・・目は目標だけでなく目標の取りうるあらゆる動きさえも既に見切っている・・・・!)
バシュッ!!と放たれた矢は再び編隊に代わり、海上を動いていた模擬標的に向けて雷撃を放った。轟音とともに標的は吹き飛び、影も形もなくなった。
「流石じゃの!一航戦。」
加賀はふうと息を吐き、弓を下ろした。
「邪魔をしないでもらえますか。訓練中です。」
ちらと横目で三人を見た加賀が弓に矢をつがえながら言う。
「そう邪険にするな。今新人を連れて案内しておるところなのじゃ。」
「だからと言って訓練を邪魔することまでは許されないと思いますが。」
「わかったわかった。すぐに退散する。」
利根は両手を広げてそういうと、二人に「帰るぞ」と告げた。
「待ちなさい。」
3人は振り向いた。加賀が弓を下ろし、こちらを向いている。
「あなたが噂の新型艦?」
「あ、はい!紀伊と言います。あの――。」
「先刻敵艦隊を艦載機で仕留めたというのは本当?」
静かだが切り込むような問いかけだった。にこりと
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