第三話 初対面
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横を通り過ぎ、工廠の中に入った。中は様々なパイプが張り巡らされ、うっかり触ったらやけどしそうなほど蒸気を上げているものもある。色々な大きさのタンク、それに複雑な装置が3人の立っている足場から下に広がっている。中はゆうに1個中隊が演習してもまだ余裕がありそうなほどの広さだった。
「あら、ご挨拶はもう済んだのね。」
戦艦ビスマルクが3人のもとにやってきた。そばにプリンツ・オイゲンもいる。
「はい。おかげさまで、色々とご迷惑をおかけしました。」
「別にいいわよ、そんなこと。当り前のことをしただけだもの。」
「ビスマルク姉様はとっても面倒見がいいんですよ。落ち着いたら遊びに来てください。色々・・・・おぁ?大変!!」
ブザーが鳴り始めた装置――巨大なオーブンレンジの様に紀伊には見えた――を見つけ、プリンツ・オイゲンが慌てて装置のもとに走っていった。
「忙しいらしいの?」
「ええ。来るべき海戦に備えて、提督から新型砲を開発せよとのお達しが来たからね。私とプリンツ・オイゲンとでやっているけれど、なかなかうまくいかなくて――。」
シュ〜〜〜〜ッとものすごい蒸気音があたりに響き渡った。それが治まった時、装置からはじき出されたのは見るも無残な黒い鉄クズだった。
「ああ!!もう〜〜〜〜!!!」
プリンツ・オイゲンが頭を抱え、両腕を振り下ろしていた。
「失敗だよぉ〜〜〜〜〜・・・・・。」
「まぁ、こんな感じなのよね。じゃ、ごめんね。次の試作にとりかからないといけないから。失礼するわ。」
「うむ。頑張るのじゃぞ。」
ビスマルクは片手を上げて、プリンツ・オイゲンのもとに行ってしまった。
「大変ですね。さっき私たちを助けに来てくれたのに、休む暇もなく開発だなんて・・・・。」
「奴は仕事好きじゃからな。プリンツはプリンツで奴を助けることが生きがいになっておる。そう気にする必要はないぞ。艦娘の中には仕事よりも食べること、寝ることが好きな奴もいるからの。」
「姉さんみたいに。」
筑摩がくすと笑った。
「なんじゃと?」
「いいえ、なんでもありません。さ、次に行きましょうか。」
利根はむ〜〜〜と仏頂面で妹を見ていたが、やがて気を取り直したらしくうなずいた。
「じゃ、次に行くかの。」
それから3人は陸戦隊司令部、防空施設、酒保、各寮などを見て回った。
「いろいろありますね。一度じゃ覚えられないくらい広いです。」
紀伊が感嘆の声を上げた。
「まぁ、吾輩たちが普段使用するのはこの中でほんの一部じゃからな。そう苦労することはないと思うが――。」
利根の足が止まった。何やらかすかな音が耳にとまったらしい。3人がいるところは軍港からやや離れた防砂林のわきの小道だった。左手にはこんもりした林が広がり、右手には生け垣が張り巡らされている。音はその右手から聞こ
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