第三話 初対面
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すぐにどんな艦娘とも打ち解けるだろうと思ったんだ。これは正解だった。途中で敵艦隊と交戦したと聞いたときはさすがに冷や汗をかいたが、一人も轟沈しなかったのは幸いだった。というかあれだ。紀伊の奴が途中から参戦して敵をほとんど瞬殺でたたき沈めたというんだから、俺は驚いた。初戦だぞ。どんだけすごいんだ、奴は。
暁のやつ、到着したらすぐにドックに入きょさせなくちゃならんな。戻ってきたら4人に間宮券わたしてクリームパフェでもご馳走してやろう。
さて、特務艦紀伊か。奴はどんな顔を俺に見せるんだろう。いかん、ちょっと緊張してきた。いつまでたっても慣れないな。今のうちにトイレに行っておくか。
1時間後――。
パタンと静かに提督執務室のドアを閉めた紀伊は深い吐息を吐いた。そのまましばらくたっていたがやがて重い足取りで廊下を歩き出した。西に面した窓からは少し陰った午後の陽ざしが降り注いでくる。ちょうど午後3時を回ったところだ。
「あ・・・・。」
紀伊はふと窓の下からにぎやかな声がするのを聞いて視線を向けた。暁を先頭に第6駆逐隊の面々が走ってくる。
「暁ちゃん、待ってなのです!」
「そうよ、そんなに走ると転ぶからね!せっかく提督が高速修復剤を入れてくれたのに!」
「大丈夫よ!レディーは転ばな・・・・きゃっ!!」
派手に転倒した暁を慌ててほかの3人が助け起こした。
「もう〜〜〜なんなのよ〜〜〜!!」
暁が膝の埃を払って立ち上がった。第六駆逐隊の四人は再びにぎやかに紀伊の佇んでいる窓の下を駆け去っていった。
「よかった・・・もう治ったのね。」
紀伊は目を細めた。暁が被弾した時にはどうなるかと思ったが直ちに入きょされた暁が元気になったことに紀伊は心の底から安堵していたしうれしかった。
「おい、そこの新人。」
「あ、はいっ!!」
不意に呼ばれた紀伊が慌てて振り向くと、見覚えのある顔だった。確か歓迎の式典の際に、吾輩は利根じゃ、と自己紹介された覚えがある。その利根が腰に手を当ててこっちを見ていた。その傍らには利根の妹だと紹介された筑摩が立っている。
「おぬしそんなにびくつかなくともよいではないか。もう挨拶は済んだのか?」
「あ、はい。終わりました。」
「よし、なら吾輩と筑摩が呉鎮守府を案内する。行くぞ、ついてこい!」
いきなりの話に紀伊は戸惑った。まだ挨拶もしていないのに。だが先方は一向に気にする様子もなく歩き出しているので、従うしかない。
「は、はい!」
歩き出した利根を追って紀伊も足早に歩き出した。
「そんなに硬くならなくて大丈夫ですよ。」
筑摩がそっと紀伊のそばに寄ってきてささやいた。
「え?で、でも・・・。」
「ああいうしゃべり方は利根姉さんの癖ですから。本当は新しい仲間が増えてとっても嬉しいのをごまかしているだけです。」
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