百三 毋望之禍
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と、一本の矢が飛んできたのはほぼ同時だった。
「何者だ?」
矢を難なくかわした君麻呂が鋭く叫べば、矢を放った本人はあっさりその姿を現す。
紫苑の従者の足穂だった。
「何のつもりじゃ?」
付き人の登場に、すぐさま紫苑が怒りと動揺を露わにする。ナルトの背から身を乗り出しての主人の叱咤を、足穂は涼しい顔で受け流した。
「いつ何時であれ、紫苑様から目を離さぬのが私の役目」
固い声で淡々と答える足穂に、紫苑は館がある方角を指差した。
「お前など邪魔なだけじゃ!里に帰るのじゃ!」
「帰りません」
「帰るのじゃ!」
「帰りません」
暫しの間続く押し問答。
髪を振り乱して足穂に怒声を浴びせる紫苑と、感情の無い声音で否定の言葉を繰り返す足穂。
浴びせられる怒声と地団駄踏む紫苑の様子を背中で感じ取りながら、ナルトは遠い目で己の直観の正確さを改めて思い知ったのだった。
山岳地帯にある『鬼の国』。
その更に更に奥に築かれた遺跡のある谷底では数多の武人像の軍団が密集していた。
「――アレが太古、諸国を蹂躙し、大陸を破滅手前まで追い込んだ『幽霊軍団』ねェ…」
遺跡周辺の結界によりその場から動けぬ傀儡人形の群集を、面倒臭そうに一望する数人の人影。その背後では大きな満月が逆光で彼らの顔を黒く塗り潰している。
復活したという妖魔【魍魎】の気配も、黄泉及び彼に仕える四人衆もいない事を把握した人影は、崖上から幽霊軍団を俯瞰していた。
その数人の人影の内、一際大きい影がゆらりと立ち上がる。その口許には獰猛な笑みが湛えられていた。
「さァ、祭りの始まりだ…ッ!」
喜々として戦の烽火を上げる鬼人。
その肩に担がれた巨大な得物が、満月の光に照らされ鈍く光った。
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