百三 毋望之禍
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「乗り心地が悪い!もそっと女らしい身体になれ」
「いや、そもそも男だから」
背中から飛んでくる紫苑の野次に、ナルトは苦笑を零した。紫苑の文句を聞いて白と君麻呂の機嫌が益々低下してゆくのがわかる。
護衛対象を背負うナルトを挟んで移動しているのだが、前からも後ろからも不穏な空気を感じ取って、彼は今一度口許に苦笑を湛えた。
ここ数日ナルト達は、巫女の屋敷にて足止めされていた。
その理由は、紫苑の護衛に衛兵達を連れて行くという足穂の主張が原因である。けれども呼集に応じる者はさほど多くなく、足穂は毎日のように館を走り回っていた。
一刻を争う時期だというのに、悪戯に過ぎてゆく時間。
それにやきもきしていた頃、当の本人たる紫苑が旅姿に身を包んでナルト達の許へやって来たのである。紫苑の先導で館の裏出にある滝へ向かう。其処は以前、ナルトと四人衆の一人・クスナが対峙した場所なのだが、実はその滝の奥が抜け道となっているようだ。
滝の抜け道を抜け、館を出たナルト達は、従者たる足穂に無断でよいのか、と進言したのだが、紫苑は頑なに首を振るだけであった。
以上の事があって、ようやく任務を実行し始めたナルト達一行。
現在、鬼の国の巫女・紫苑を連れて、目的地である沼の国へ向かっている最中なのだが、普通の人間ならばかなりの日数がかかってしまう。
従ってナルトが紫苑を背に乗せて、木の枝から枝へ飛び、移動しているのだ。
最初は白と君麻呂が、己が紫苑を連れて行くと進み出たのだが、双方とも彼女に良い印象を抱いていないのは明らかである。特にナルトへ死の予知を齎してからの紫苑に対する態度が顕著だ。
表情にこそ出ていないが、不穏な空気が醸し出されている。その矛先を向けられている紫苑は全く気付いていないようだが、聡いナルトは即座に理解した。
これは自分が紫苑を背負ったほうが良いだろうと。
零尾暴走の危険を察した際、白と君麻呂だけを別行動にしたのも直観に従ったまでである。自分が倒れたら、零尾だけでなく彼らも暴走しそうな予感が何故かしたのだ。
とりあえず、よく女性と間違えられる白に頼まなくてよかったな、と紫苑を背負い直してナルトは思った。
まずは鬼の国の遺跡周辺の結界に閉じ込めている【魍魎】配下の幽霊軍団から紫苑を引き離さなければならない。ナルトが張った結界なら破られる事は無いだろうが、白と君麻呂の結界はさほど丈夫ではない。よって、誰かが結界内に侵入し、【幽霊軍団】と対峙する事で足止めしなければならない。
【念華微笑】の術でその足止め役に連絡を取ったナルトは、改めて鬼の国の深い森を突き進んでゆく。
ふと見知った気配に気づいて、ナルトは先鋒を務める君麻呂の名を呼んだ。
名を呼ばれた君麻呂が足を止めるの
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