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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
45.吾闘争す、故に吾在り
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ょっとしたら人間の女性と性交して子を宿す事も出来たかもしれない。子供がどちらの種族寄りになるか、寿命の差はどうするのかなどの細かい問題はさて置いて、そんな風に限りなく同じ存在として生活空間を共有する事は出来る筈だ。

 それでも俺とあの子は駄目だった。

 俺の感じた共存可能という価値観は幻想だったんだろうか。どこか致命的な間違いがあったのだろうか。理解できていても決して相容れない何かが、人と魔物の間に存在するのだろうか。様々な疑問が脳裏を渦巻き、俺はその答えをオーネストに求めようとした。

 ――可能なんじゃないか?

 オーネストは、別段変わった様子もなくそう告げた。

 過去、動物が自分と違う種族の子供の親代わりになったという話はいくつかある。それは付加したばかりの鳥に見られる刷込効果(インプリンティング)から本能的に赤ん坊などの弱い個体を守護対象と近くする動物的母性まで様々な形で現れる。オーネスト曰く、最終的にどうなるかは別として、寄り添うぐらいなら訳はないということだった。

『確かに魔物は人間を敵視するが、知能の低い奴は調教(テイム)だって可能だ。それも立派な共存関係だ。どちらかの種族が片方に寄るか、優位に立つか、空間を隔てるか……平等である必要性を除けば出来ない話でもない。D型アミノ酸で構成された光学異性体でもあるまいし、食える物が共有できれば個人レベルじゃどうにかなるもんだ』

 アミノ酸云々の話は俺には理解できなかったが、とにかくオーネストが言うには「個人レベルでは」可能だろうということだった。では、ちょっと想像は出来ないが社会全体ではどうだろう。これはオーネストに聞くまでもない。『条件付きで可能』だ。

 だが、今現在では少なくとも俺と魔物が共存できる可能性はないだろう。

 理由その一。俺があの子を殺したことを、他の『異端児』は知っているから。
 理由その二。魔物の生命としての在り方を、俺は否定しているから。

 そして理由はもう一つ。このダンジョンの主が、神の尖兵である俺達を敵視しているからだ。

「グルガァァァアアアアアアアアアアアッ!!」

 真正面から迫る6Mオーバーの巨岩――いや、これはまるで巨岩のように肥大化・硬質化した甲羅だ。ウォール・トータス――確かそんな名前をした、深層の大型魔物が耳を劈く咆哮をあげる。撃破推奨レベル5,5と揶揄されるその姿は正に城壁の名に相応しく、巨体から繰り出される突進は同じフロアの別の魔物さえ軽々と吹き飛ばす生きた重機だ。
 ちなみに甲羅は複合構造になっているため、表面を壊すと奥の層にまた甲羅が現れる。そして甲羅の破壊に時間をかけすぎると体内で新たな層の甲羅が生成される。人間なんぞ一発で噛み殺せそうなワニガメ似の面が恐ろしい形相でこちらを睨んでい
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