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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
45.吾闘争す、故に吾在り
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かし、ずたずたになって尚機能する腹筋に槍が締め上げられて抜けない。失血死を狙った行動だったのだろうが、致命的な隙だった。咄嗟に身を引いた蜥蜴の身体に袈裟切りの傷がつつ、と走り、次の瞬間に鮮血が噴き出た。

「俺は、俺がお前に殺されることを許容しない。だからお前に俺は殺せない。そう、全ては俺が考えて俺が決める事だ。そこに他の誰かなど介在しない」

 まったくナンセンスだ。破綻した理論だ。そんな都合のいい世界の解釈など道理が通らない。
 すなわち、通らない道理を通すことが出来ないのがお前の限界だ。
 お前は俺を殺すという絶対目的を達成できないが、俺は出来る。

 この瞬間、俺にとってこの戦いは何の価値もない『勝ち戦』に成り果てた。

「俺を殺しきれなかった貴様に目は必要ない!!」

 剣を振るう。蜥蜴の眼球が肉片となって抉り飛ばされた。

「耳も、鼻も腕も足も首もッ!!」

 剣を振るう。頬の近くにある耳が、鼻が、手が、足が、蜥蜴の身体から切り離されていく。この魔物は鱗の強度の分だけ余計に硬く、決して脆い体ではない。だがそれは客観的評価であり、煉瓦の壁も分厚い鉄板も平等に破壊する純然たる攻撃力の前には意味のない事実だ。

 徒手で戦う魔物なら武器を捨てて牙なり爪なりを剥いただろう。だからこそこいつは、武器を扱うが故の新たな隙を生み出した。それがこの蜥蜴の戦士としての致命的な欠点――こいつは、超近接戦闘に対応できない。

「――全てを抉られッ!!戦士としての価値さえ喪失しッ!!何故自分が敗北したのかさえ理解できぬまま血達磨になれぇぇぇぇーーーーッ!!!」

 嗚呼、今宵も我が身に降り注ぐ鮮血の暖かさが心地よい。
 お前を殺すほどに俺も死に近づいていく、その感触が心地よい。


 ――嘘をつくな、妄想に陶酔したどうしようもない愚図め――


 俺の心の中で、誰かが心底軽蔑するようにそう呟いた気がした。



 = =



 昔、あることが切っ掛けでオーネストとこんな話をしたことがある。

 ――魔物と人の共存は可能なのか?

 その時の俺はまだ本当に新人で、『異端児(ゼノス)』と呼ばれる魔物と友達になりかけていた。だが、少しばかりショッキングな事が起きて、結局俺は自らの手でその子を倒すことになった。倒す瞬間まであの子は俺のことを友達だと思ってくれていたと思うし、俺だって友達だと思っていた。なのに、魔物と人という壁を俺達は越える事が出来なかった。

 そこまで大きな壁だろうか。
 言葉は通じるし、一緒にいて楽しい思いを共有することも出来る。同じ食事を取ることも出来るし、逆に励まされたりもした。『異端児』はそうやって生活の大部分を共有することが出来る存在だ。
 彼は男だったが、ひ
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