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悪意の風
5部分:第五章
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 こう言ったのである。
「国民の為にな」
「だからこそあの世襲制の共産主義国家はですか」
「否定されますか」
「ああなっては終わりだ」
 独裁者はその国のことは全否定した。頭から。
 そしてその国を反面教師にしてだ。こう言ったのである。
「私は自分の子供達に後は継がせない」
「そのこともですね」
「定められているのですね」
「私自身でな」
 己への戒めでだ。世襲は禁じているというのだ。
 そうしたことも決めてだ。それでだった。
 彼は政策方針を転換して国富に専念した。その結果長い時間がかかったが彼の国は豊かになった。そして彼が死んでからだ。
 国では民主化が起こり豊かな民主主義国家となった。独裁者は確かに独裁者だが国を豊かにした人物として国民から英雄として尊敬される様になった。そうなるまでにはこうしたことがあったことは知られていない。彼が風により方針を転換させたことは。


悪意の風   完


                      2012・4・24

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