幻の特務艦紀伊。
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・・・きっと・・・できる・・・から・・・・.」
「暁さん・・・・。」
「私・・・少し・・・聞いたの・・・・紀伊さんは・・・・・特別だって・・・・・。」
「私が・・・・特別・・・・・?」
紀伊は凝然と暁を見つめていた。暁は弱弱しく、だが大きくうなずいて見せた。
「きっと・・・・だいじょう、ぶ・・・だから・・・・・。」
こんなにひどい傷を負っているのに、なおそれでも自分を信じてくれている。怖くて怖くてまともに動き出すことができない自分を。そのことに紀伊は胸が一杯になってしまった。
「暁さん・・・・。」
そのとき、雷が叫んだ。
「紀伊さん!!お願い!!!」
次の瞬間紀伊は動いていた。自分でも驚いていた。だが、体が勝手に動いたとしか言えない。戸惑いつつも口と手は勝手に動き始めていた。そのことが自分自身信じられなかった。
「艦載機隊、戦闘機発艦!!続いて、爆撃機隊、爆装して発艦開始!!!」
紀伊が叫び、右の飛行甲板を水平に突き出した。後部ハッチが開き、勢いよく射出された艦載機が次々と飛び立っていく。
「目標!!敵先頭艦4隻!!戦闘機隊は敵をけん制!!爆撃機隊、急降下爆撃開始!!」
紀伊が叫んだ。爆撃機の前に飛び立って戦闘機隊が機銃で敵をけん制し、怯みたった敵の頭上を艦載機が猛然と襲い掛かった。次々と爆弾を命中された敵駆逐艦が大爆発を起こして沈んでいく。だが、紀伊の眼は次の目標に向けられていた。
「主砲、敵重巡に向けて集中斉射!!」
41センチ3連装砲塔が旋回し、敵に向けられ、左手が前に振りぬかれた。
「テ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
轟然と3連装砲が火を噴き上げ、衝撃波があたりの海を斬り割った。飛来した巨弾が敵重巡に集中的に命中、一瞬で轟沈させた。続いてはなった第二斉射も残存艦に命中し、木端微塵に吹き飛ばした。すべてがほぼ一瞬のように雷の目には映った。
「すごい・・・・。」
響も雷も電も声もなく紀伊の戦いぶりを見つめるだけだった。
海上には敵艦の姿はなく、ただ立ち上る黒煙が敵がいた名残を示しているだけだった。紀伊はほっと息を吐いて左手を下した。任務を終えた艦載機たちが次々と飛行甲板に帰ってくる。
「みんな、よくやってくれたわね。ありがとう・・・・。」
紀伊はつぶやいたが、はっとして反転し、すぐに暁のもとに戻っていった。
紀伊がもし上空に目を向ければ、青空に漂う一点の黒いしみに気が付いたかもしれないが、今の彼女にはそこまでの余裕は全くなかった。
「暁さん、暁さん、しっかり!!」
雷の肩にすがっている暁は顔色を失っていたが、それでも気丈に紀伊を見つめた。
「やった・・・わね。」
「はい・・・!暁さんのおかげです!!」
紀伊はそっと暁の傷ついた手を握った。小さな手だった。だがその手が自分を後押ししてく
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