幻の特務艦紀伊。
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よね。」
「それはレディーとは関係ないような気がするが。」
響がぽつんと言った。
「何よ!?」
食って掛かる暁にぷいと響はそっぽを向いた。
「喧嘩はやめるのです。」
電が二人を分けた。
「そうよ、まだ目的地に着いたわけじゃないんだから。」
雷がたしなめた。
「わかってるわよ。まだここは港じゃないんだもの。」
暁があたりを見まわした。海上は穏やかに凪いでいて敵の艦影どころか周囲には暁たちを除いては誰もいない。妙に眠気すら感じさせるほどの穏やかな春の気候だった。
「さ、もう一息よ。紀伊さん頑張りましょう。」
暁が言った。
「みなさん仲がいいんですね。本当に、羨ましいです。」
紀伊が微笑んだ。どこか寂しそうだった。
「姉妹艦だっていうのもあるけれど、他の艦と違って、私たち第6駆逐隊は行動を共にできることが多いの。喧嘩もするけれど、みんなとっても仲良しなんだから!」
暁が誇らしげに言った。
「紀伊さんはお姉ちゃんや妹さんはいるのです?」
「いない・・・ううん・・・・わからないんです。」
紀伊は顔を曇らせた。とても寂しそうだった。
「わからない?」
「ええ・・・・。艦娘の皆さんは生まれた時に前世の記憶を持っていらっしゃるってよく聞かされました。でも、私、生まれた時にそういうものが一切なかったんです。」
第6駆逐隊の4人は顔を見合わせた。
「横須賀鎮守府にいた時も、私はほとんど一人で・・教えてくれる担当教官のほかには話す人もいなかったんです。そして、その人たちも私がどういう存在なのかも教えてくれなかった・・・・。」
紀伊の瞳がゆらめき、何かを振り落とそうというようにつらそうに首を振った。
「だから私は一人ぼっちなのかもしれません。きっと・・・きっとそうなんです。」
「そんなことないわ。私たちがいるじゃない!」
暁が声を上げた。
「え?」
「紀伊さん、私たちの事、友達じゃないのです?」
「友達・・・・。」
「ここまで3日一緒に旅をしてきて、短かったけれど、いろんなお話ができたし、とっても楽しかったんだから!」
暁が言った。紀伊は大きな灰色の瞳で暁を呆然と見つめている。
「そうそう。とっても新鮮だったよね。」
「なのです。」
「その通り。」
「皆さん・・・・。」
「私たちは同型艦だけれど、それ以上にほかにたくさんの友達がいるの。みんな姉妹と同じくらい大切な人なのよ。」
雷がうなずいた。
「そう、仲間は姉妹艦だけじゃない。」
「響ちゃんの言う通りなのです。」
紀伊はぎゅっと目を閉じてこぶしを握りしめたが、すぐに目を開けた。
「皆さん・・・・本当に、ありがとう。私、初めての友達ができてとっても嬉しいです!」
頬を染めて目を輝かせた。
「私たちもよ!」
にっこりしようとした紀伊がはっと顔を上
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