幻の特務艦紀伊。
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加賀は目を閉じ、かすかに首を振った。
「あなたの気持ちはよくわかります。でもあなたと私の気持ちは違う。私はどんなに優れた艦であろうと、実力が伴わない相手は絶対に認めない。赤城さん、そのことは覚えておいて。」
加賀はそういうと、踵を返して鎮守府建物の方に歩いていった。
「加賀さん・・・・。」
赤城は寂しそうな目で親友を見送っていた。
同時刻――。イワクニ市付近海上――。
滑るように快走する数人の艦隊があった。一人を中心にして輪形陣形を展開し、左右を哨戒しながら進んでいく。
「大丈夫ですか?」
先頭を行く暁が振り向いて声をかけた。
「え、ええ・・・ありがとうございます。大丈夫です。」
中心で護衛されている艦娘はやや息を切らしながら答えた。背中まで届く長い銀髪がたなびきその中に赤い髪が見え隠れしている。何とか足手まといにならないようについていこうというせいか動きにぎこちなさが見えるが、それでいて、大きな穏やかな灰色の瞳は物珍しそうにあたりを見まわし続けている。
「暁ちゃん、少し速度を落とすのです。紀伊さんが大変そうなのです。」
後ろを走っている電が声を上げた。
「え!?な〜に!?聞こえない!!」
「そ・く・どを落とすのです!!」
電が声を精一杯張り上げた。
「暁、速度を落とそう。もうこのあたりには深海棲艦はいない。」
響が暁の隣に走ってきて促した。
「まだわかんないじゃない。」
暁は不満そうに声を上げたが、ちらっと紀伊の様子を見ると少し速度を落とした。
「ごめんなさい・・・私が足手まといで・・・・。」
紀伊と呼ばれた艦娘は俯いた。大きな赤いスカーフが胸元に結ばれた黒い制服のような上衣に白のスカート。黒の上衣の左腕にはほそい金色の筋が入っている。彼女の艤装を見た人は一瞬空母だと思うかもしれない。右の腕には装甲された飛行甲板がついているからだ。だがただの空母でないことは背中左側に取り付けられた艤装にある強力な41センチ3連装胞2門、15,5センチ3連装副砲2門が物語っていた。また対空機銃も複数装備されているほか見慣れない艤装も足の腿あたりに取り付けられている。魚雷発射管のように見えるが魚雷が装填されていないのだ。
それでいてしゅっと伸びた美しい細い脚やすらりとした体つきはどこか頼りなさも感じさせる。
「気にする必要ないわよ。これが私たちの仕事なんだもの。」
雷が快活に言った。
「そうなのです。それに紀伊さんはすごくすごく立派なのです。初めての航海なのにすぐに走れるようになったのです。」
電が嬉しそうに言った。
「ううん、皆さんが一生懸命教えてくださったおかげです。ありがとうございます。」
紀伊が頭を下げた。端正な顔に銀髪がふわりとかかる。
「相手にわかりやすく教えるということは、レディーとして当然の事
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