暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第18話 夕暮れの死闘
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葉に素直に従い、彼に背中を向けて走った。剣戟の音を背中で聞きながら。
 荒く息を吐きながら、そして時折躓きながらも少年は走る。
 さらに進んでいくと、ようやく木々の中を出た。走り越え――というより飛び越えるように抜けたソラは、もう限界だ、と思い、膝に手をついて息を整える。顔は汗やら涙やらでぐしゃぐしゃだ。
 本当は、このSAOでの肉体は無意識の呼吸を行わないため(意識的な呼吸は可能である)、《息切れ》という概念は存在しないが、そこはまだ小学生であるソラには理解できないし、馴染めないものだった。つまり、率直に言うと思い込みで息が切れているのだが、それは今はどうでもいいことだ。
 数十秒かかってようやく息を整え終え、ソラは目元を擦り、目の前を見上げる。
 そこに広がっているのは、夕暮れ色に染まった湖だった。
 ついさっきもユウと一緒に歩きながら見ていたはずなのに、ソラは一瞬目を奪われる。
 湖水に映る夕日、そよ風になびく草原。その他を含むすべては、彼が現実世界でも見たことのない幻想的な景色だった。
 だが、見とれるのも本当に一瞬で、ソラはハッと我に帰り、パニックに陥る。
(ど、どうしよう……?? け、警察に……い、いや、ここに警察はいないから、えっとぉ〜……)
 あたふたしながら、ウインドウを開いたり閉じたりと繰り返す。さっきまで逃げることに徹していて、それだけしか考えていなかったため、それから先のことは頭になかったのだ。
 そして、パニクっていたソラは、今目の前までプレイヤーが来ていたことすらわかっていない。
「あの、君……」
「わひゃあ??」
「うおっ??」
 いきなり声をかけられたことで、ソラは奇妙な声を上げる。声をかけたプレイヤーもソラの声に驚いた。
「な、なになになに??」
 ソラは反射的にウインドウを閉じて短剣を抜き、目の前に突きつける。ソラは肩で息をしながら見ると、そこにはソラよりも身長の高い――まあ、ソラよりも小さい人などそうそういないのだが――両手を挙げた黒ずくめの男プレイヤーがいた。
 年齢は、ユウと同じぐらいだろうと判断できる。ソラから見ても男性なのに女性にも見える中性的な顔つき。何より特徴的だったのは、黒のコート、黒のシャツ、黒のズボン……どこを見ても黒だった。背中に背負っている片手剣だけは違う色だが、まだまだ未熟なソラでも、その剣はかなりの業物だと理解できた。
 黒ずくめのプレイヤーは苦笑いをしながら、
「お、落ちついて……まず、剣を下ろしてくれないか? こちらは攻撃する気はないんだ」
「ほ、ほんとうに……?」
「本当だよ」
 その証拠として、彼は装備していた片手剣をアイテムストレージにしまった。それを見て、ようやくソラも息を深く吐きながら短剣を下ろす。黒いプレイヤーも安堵の息を吐く。

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