第二部
狩るということ
にじゅう
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彼女は酷く動揺し思案を重ねていた。
それがどういったことであるのか、私が彼女に尋ねることは敢えてしなかった。
先ずもって、私が出張って彼女にプラスになる要素が一つもないということ。そもそも、どこかの誰かに対して必用に肩入れすることは憚られた。
私のそのスタンスが変わることなど、早々起こってはならないし、自身でそれを回避せねばならないのだ。
既に手遅れ感は否めないが……。
私の想いとは他所に、ロングソードの束を積んだ荷馬車は騎士達を置いて一足先に村へと戻るようである。
馬に鞭を入れ、遠ざかっていくその姿が小さくなるのを見送ってから、総隊長は大きく息を吸ってから吐き出す。
「一旦はここでの仕事も落ち着いたということにしよう。この森の奥については、再度王都より本隊が到着してから綿密に調査を行うことになる。早馬を送ったとはいえ、私も一度戻らねばならぬしな」
「……」
「エリス、君はどうする? もし王都へ戻るようなら」
「いえ、まだ私はやるべきことが残っておりますので」
総隊長が最後まで言うことなく、エリステインはそれを拒否する。
まるで、拒絶にも近いようなその言いぐさに、騎士の1人はあたふたと、残りの2人に至っては剣呑な空気を醸し出しているのが傍目にも分かるほどだ。
「ふ、副長。もう少し言い方がですな……」
どうやら、あたふたと取り繕うように言い含めているのはエリステインの直属の者であるようだ。
ふむ……。にしても副長とは、エリステインの地位はもしかしたら、私が思っているよりもずっと高いのかもしれない。
とは言っても、先ほどの物言いは流石に角が立ちすぎる。下手したら不敬と捉えられても文句は言えない。実際、総隊長の直属の者と思われる2人に関しては、腰の剣に手を触れているほどなのだ。
「いやいや、良いんだ。……それであるのならば仕方がない。残念ではあるが、私たちだけで先んじて王都に戻るとしようか」
右手を上げて、総隊長は苦笑いをする。
「申し訳ありません。……では、我々も一度拠点へ戻りましょう」
そう言って荷馬車が進んでいった方角へ歩みを進めるエリステインと、そのすぐ後方へ続く彼女の部下。
やっとこの場から解放される、そう思っていた私のヘルメットが音の波を表示する。
「……本当に残念だ」
ヘルメットの集音機能だから捉えられた呟き。
私の視線の先。
降り下ろされた右手に呼応するように、総隊長と呼ばれた男のすぐ側に控えていた男が抜いたロングソードが、エリステインの部下を背中から斬り付ける。
「かはっ……!」
その前方を歩いていたのと、仲間であるはずの者の手による行為だと気付いた衝撃により、彼女の反応が僅かに遅れる。
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