暁 〜小説投稿サイト〜
宇宙を駆ける狩猟民族がファンタジーに現れました
第二部
狩るということ
にじゅう
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様子も見られず、プレートメイルも随分と綺麗なままである。
 それなりの日数が経ってはいるが、まあまあ都合良く最寄りの村に腕の良い鍛冶職人が在住していたものである。

 白々しい考えを持ちつつも、ロングソードの束を隠しておいたカモフラージュを崩す彼女達を観察する。

 若干迷惑そうに、眉間に皺を寄せているエリステインには気付かなかったことにしよう。
 そんな、ただ木の枝を掛けたり物凄く自然に見えるように植木をしただけなのだから、そんな手間ではないだろうに。遠目からだと森の一部と見間違うクオリティーなのだから、誉められこそすれ、そんな迷惑そうな顔をされるなんて心外極まりない。

 あれだけのために、30分は時間を掛けたといのに。これだから近頃の若いものは……。

 それにしても、なんだか随分と不穏な空気を感じるわけだが、これはいったいどういうことなのだろうか。私の杞憂で済めば、それに越したことはないが。

 やっとこさエリステインはカモフラージュを解き、露になったロングソードの束を、後ろに控えている総隊長と呼ばれる男達へと見えるようにするために体を入れ換える。
 総隊長はひとつ頷き、他の騎士にロングソードの束を運ぶように指示を出すと、エリステインへと向き直った。

「エリス……。生きて帰ってきてくれただけでなく、仲間達の“魂”も連れ帰ってきてくれたこと、感謝する」

 そう言って彼女の肩に手を置く男の顔は、満足そうに笑んでいる。
 だが、エリステインに至っては対照的に、随分と不機嫌そうに眉を寄せて首を振っていた。

……なんだ。まだ私のカモフラージュのことを怒っているのか。お子さまだな。

「総隊長も、お怪我ひとつなくなによりです」

 おいおい、エリステイン。八つ当たりは良くないぞ。
 私ならここに居るのだから、面と向かって言えばいいじゃないか。

 なんてことあるはずなく、彼女の静かな怒りは総隊長に向けられており、その怒りを向けられた当の本人はと言えば、知ってか知らずか飄々としたものである。
 こればかりはそこに就いた立場と、それこそ年季の差としか言いようがない。

「『私だけでも』と、部下達が退路を切り開いてくれてね。君を含めた騎士達のお陰で、なんとか命からがら生き延びることができた」
「……そうですか」
「エリス、君には辛い想いをさせてしまったね。すまなかった」
「いえ、総隊長にもお立場というものがございますから。私は気にしておりません」
「そう言ってもらえると、少しは気が楽になるよ」

 まるで、安い三文芝居を見せられているような気分になるのは私だけだろうか。
 立場上強く追求できないエリステインは、きっと何かに気が付いている。それは、総隊長の遺体が見付からなかったと告げたとき、
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