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悪意の風
3部分:第三章
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第三章

「閣下、一つ問題があります」
「何だ、問題とは」
「はい、問題はそのウィルスをどう撒くかです」
「そのことか」
「はい、どの様にして撒きましょうか」
 その部下は真剣な顔で独裁者に問う。
「一体」
「そうだな。ただ撒くと言ってもな」
「それだけでどうなるものではありません」
「全くだな。ではどうするべきか」
「それではですが」
 その部下とは別の部下がだ。ここで独裁者に意見を具申してきた。
「風を使いましょう」
「風?」
「はい、風です」 
 それを使いだ。ウィルスを撒いてはどうかというのだ。
「そうしてはどうでしょうか」
「風か。そういえばだな」
「秋になれば我が国からあの国の方に風が吹きます」
 気候の関係でだ。そうなるというのだ。
「だから。どうでしょうか」
「そうだな。風を使えばな」
 ウィルスを効果的に撒くことができるとだ。独裁者は腕を組みそのうえで言った。
「確実に撒けるしな」
「しかも効果的に」
「人を使って撒くよりも確実だ」
 ウィルス保持者を隣国に潜伏させて動き回らせるよりもだというのだ。
「ずっとな」
「はい、どうでしょうか」
「いいな」
 腕を組みだ。独裁者はこう返した。
「では秋にだ」
「はい、秋に風に乗らせて撒いて」
「ウィルスの症状が出た時にな」
「侵攻すればいいかと思います」
「わかった」
 ここまで聞いてだ。独裁者は正式にそれはいいとした。
「ではそうしよう。秋まで待とう」
「その時にこそですね」
「私の、我が国の悲願が成就される」
 独裁者はにやりと笑って述べた。彼は隣国を併合し自国が豊かな大国になるその野望が達成されることを確信していた。その秋には。
 季節は必ず移る。それが止まることはない。
 その秋が来た。そしてだった。
 ウィルスが実際にだ。風に乗って撒かれた。その時点では。
 独裁者は野望の実現を確信していた。そしてだ。次の指示を出したのである。
「ではだ。次はだ」
「はい、いよいよですね」
「軍に対して」
「第二種戦闘配備だ。しかしだ」
「しかしですか」
「そうだ。一応は第二種だが実質的には第一種だ」 
 即ち何時でも出撃できる様にしておけというのだ。
「わかったな」
「ですね。それでは」
「今より」
 部下達も応えてそうしてだった。軍も配備に就いた。秘密裏に。
 彼は今にもその隣国を攻めようとしていた。風はそのまま彼の国から隣国に向かって吹こうとしていた。だがその風がだ。急にだった。
 風の向きが変わった。例年とは逆の方向に。つまり隣国から彼の国に向かって吹いてきたのである。そしてその風に乗せたウィルスもだ。
 彼の国を襲った。それにより国民は次々と病に倒れた。その状況はというと。
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