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悪意の風
1部分:第一章
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て害さない、ですね」
「それもまた」
「そうだ。無論人口もだ」
 それもだというのだ。
「害さない。だからだ」
「出来るだけあの国を無傷で手に入れますか」
「何としても」
「その為には手段を選ぶな」
 彼はまた言った。
「そしてその手段だが」
「具体的にはどういった手段を使うか」
「問題はそこですね」
 部下達もだ。独裁者の言葉に応えた。
 だがそれでもだ。彼等もあれこれと考えるがそれでもだった。応えは出なかった。
「どうしたものでしょうか」
「これといった方法が思いつきません」
「土地も産業も人口も害さず手に入れる」
「具体的にどうすればいいでしょうか」
「細菌はどうだろうか」
 ここでだ。独裁者は禁じ手とされる方法を口にした。見れば彼は粗末な軍服であり座っている席も重厚なだけの樫の木だ。絨毯も質素なもので装飾もない。まるで何もない質素な部屋だ。それがそのまま彼の国を表していた。

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