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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十五話 贖罪
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も辛いのかもしれない。顔色も心なしか良くないように思える。私は元帥の近くまで歩を進めた。
「卿には礼を言わねばならん。私が助かったのは卿のおかげだそうだな」
「……」
「ヴァレンシュタインから聞いたのか?」
穏やかな声だ。余り怒っていないのだろうか?
「はい、元帥が狭心症だと聞きました」
「そうか」
元帥は小さく頷いた。
「私の命令書を持っていると聞いたが?」
「これです、閣下」
気付いたように問いかける元帥に私はあの命令書を渡した。
元帥は一読して苦笑した。
「妙な物を欲しがると思っていたが……」
私はどう答えて良いか判らず、黙って元帥の顔を見続けた。
「困った奴だ……。そうは思わんか、少将?」
「……中将から書簡を預かっております。元帥に渡してくれと頼まれました」
私は中将から預かった書簡を元帥に手渡した。何が書いてあるかは知らない、しかし容易に想像はつく……。
元帥は書簡を受け取ると読み始めた。一度読んで、少し考え込んでからもう一度読み出した。読み進むにつれ元帥の表情に苦痛が浮かぶ。
「困った奴だ……。卿は内容を知っているのか?」
「いえ、知りません。ですが想像はつきます」
「……」
「おそらく、責任は自分にある故、小官たちを責めないようにと書いてあると思います。ですが、中将に助けを求めたのは我々です。どうすれば勝てるのか我々には判りませんでした。中将は我々の頼みに応えたに過ぎません。責めを負うべきなのは我々です」
「勝つためには仕方ありませんでした。指揮権の委譲がスムーズに行くかどうかも有りますが、委譲した場合、士気の低下、兵の混乱が想像されます。また直属艦隊が素直にミューゼル提督の指示に従うかどうか判りませんでした」
元帥は困ったような笑みを浮かべ首を横に振った。
「元帥!」
「残念だな少将」
「?」
「これには、こう書いてある。元帥の信頼を裏切るような今回の行為はいかなる理由があろうと許されるものではない。それ故自分を軍から放逐して欲しいと」
「放逐!」
思わず声が出た。
軍から追放せよと! そんな事を書いたのか、ヴァレンシュタイン中将は。
「これを許せば軍の統制が保てなくなる。厳しい処置を望む、ただ他の者には罪が及ばぬようにして欲しいと。……困った奴だ、なんでも自分で背負い込もうとする……。どうしたものか……」
「しかし、今中将が軍からいなくなれば誰がオーディンを守るのです! そんな事は不可能です! 」
「……これ以後は私に帝都を守れと言っている……」
「……」
切なそうな表情をする元帥に胸をつかれた。確かにそうだ。元帥はもう戦場に出るのは不可能だろう。しかし帝都において睨みを利かせることなら可能だ……。
私は何処かで
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