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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十五話 贖罪
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■ 帝国暦486年12月3日 帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー
「メックリンガー少将、反乱軍にも出来る奴がいるようだな」
「ああ、まさかあんな手で来るとは思わなかったよ」
スクリーンに映るケスラー少将の顔が渋いものになった。おそらく私も彼と同じ表情をしているのだろう。
ケスラー少将の言うとおり、反乱軍にも出来る奴がいる。余り嬉しい状況ではない。近年帝国が優勢に戦いを進めているとは言え、強敵は少ないほうがいい。
「これからミュッケンベルガー元帥に会いに行くのか?」
「うむ。先程軍医から連絡が有った。大分良くなったようだ。私と会いたいと言っているらしい……」
気遣うような口調でケスラー少将は問いかけてきた。彼の気持ちはよくわかる。反乱軍よりこちらのほうが難敵だろう。反乱軍なら倒せば良い、しかしこの敵は説得しなければならないのだ。
「そうか、これからが本当の勝負だな」
「やれやれだ。なかなか楽はさせてもらえん」
「うまくやってくれ、頼む」
沈痛な表情でケスラーが話してくる。無理も無い、不安なのだろう。我々がやったのはクーデターのようなものだ。勝つためとは言え、決して褒められたものではない。しかし、多分判ってもらえるはずだ。元帥の中将に対する信頼も厚い、きちんと説明すれば大丈夫だ。
「ケスラー少将、こちらが終わったら、そっちへ説明に行く」
「うむ、待っている」
「そちらの状況はどうなのだ」
途端にケスラー少将の表情が曇った。
「最悪と言っていいな、 “何故攻めない” と大騒ぎだった」
「無理も無い。私も一瞬迷った、攻めるべきかと……」
短期決戦、元帥の病気、司令部の動揺、それさえなければもう一撃を加えただろう。
「撤退は正しい判断だと思う。あれだけの敵だ、一つ間違うとダゴン星域へ向けて後退戦をしかねない。長期戦になるだろう」
「……厄介な敵だ」
ケスラー少将が生真面目な表情で俺の判断を支持してくれた。その通りだ、あの判断は間違っていなかった。しかし、敵を殲滅できていればもう少し楽な気持ちで元帥に会いに行けただろう。いまさらながら、厄介な敵だと思う。
「ヴァレンシュタイン中将がいてくれればな」
「?」
「もう少し気持ちが楽になるのだが……」
思わず、言ってから苦笑した。彼がいればこんなところで悩んでいる必要も無いだろう。ケスラー少将も同感なのだろう、同じように苦笑している。私は彼との会話を打ち切り、元帥の部屋へ向かった。
「エルネスト・メックリンガー少将です。入ります」
「うむ」
部屋の中からは重々しい元帥の声が聞こえた。
中に入ると、元帥はゆったりと椅子に座っていた。未だ立っているのは辛いのだろう。もしかすると、座っているの
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