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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン48 鉄砲水と砂上の異形
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「ハァ……」
『だから言っただろう、どうせ勝つと。それに、いい目になったぞマスター。戦士の目だ』

 あまりと言えばあまりの言い草についカッとなり、何か言い返そうと思って口を開く。だけど言葉を発するより先に、腕のデスベルトがまたしても光り始めた。

「しまった、これまだ生きて……!」

 体重が数倍に跳ね上がったかに思えるほどの倦怠感が全身を包み込み、どこかへ飛んで行こうとする意識を辛うじて繋ぎとめる。どうにか持ちこたえて重い体を引きずり、最初に思っていたより遠くにあったデュエルアカデミアに到着したころにはすでに3つある太陽はどれも地平線の彼方に沈み切っていた。
 ……精霊を召喚すれば、確かにもっと早くアカデミアに着くことだってできただろう。だけど僕にはひとつだけ、どうしても気にかかることがあった。今日のデュエルの最後のターン、サンドモスにとどめを刺したあの瞬間。後悔するでもなく胸が痛むでもなく、何か嫌な、暗い愉悦の感情が心のどこかにあったことを、歩いている最中ずっと思い返していたのだ。
 もしかしたら、それが僕の本性だったりするんだろうか。敵の命を奪うようなデュエルを、口では綺麗事を言いながら心の奥底では楽しんでいる。そんな化け物を、僕は自分の中に飼っているのだろうか。違う、と言い切るだけの自信は、ずっと歩いている間も最後まで出てこなかった。
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