ターン48 鉄砲水と砂上の異形
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
し
サンドモス LP4000 手札:2
モンスター:なし
魔法・罠:なし
「僕のターン!シャクトパスを召喚して、ダイレクトアタック!さっきの借りは返しておくよ!」
無数のタコ足を伸ばし、動きの遅いサンドモスに容赦のない連打を加えていくシャクトパス。
シャクトパス 攻1600→サンドモス(直接攻撃)
サンドモス LP4000→2400
「これで少しは……」
それ以上の言葉を続けることはできなかった。サンドモスの目のない顔を見た瞬間、その気迫に呑まれてしまったのだ。
その時になってようやく先ほどの疑問の答え、なぜはるかに実力で劣るはずのサンドモスを相手にこれまで戦ってきた相手と同じくらい苦戦しているのかを悟った。僕が今まで経験した闇のゲームは、その相手もダークネス吹雪さんにヴァンパイヤ・カミューラ、幻魔皇ラビエルや邪神アバターといった文字通り化け物級の力を持つ大物相手がほとんどだった。だけどそういう相手は当人が自分の実力に絶対の自信とプライドを持っていたことから、最後の最後までこっちはそれにがむしゃらに食らいついていくだけでよかった。
……だけど、この相手はそれとは全くパターンが違う。自らの限界を知り、それを誰よりも理解したうえでなお命を張ってデュエルを挑んできている。所詮彼らにとって闇のデュエルとは、いつ終わるともしれない悠久の命の中の暇つぶしのひとつでしかない。だがこの世界で生きるだけの何の変哲もないモンスターであるサンドモスにとっては、デュエルに使う一瞬一瞬が自らのいつ終わってもおかしくないちっぽけな命を全力で燃やす行為なのだ。
要するに、これまでの『格上』とは意気込みのベクトルがまるで違う。勝ち抜いて生きのびたいというこの純粋で本能的な欲望がこの気迫を、『格下』にしか出せないこの強さを生み出しているのだろう。
これ以上はないぐらいに噛み砕くと、戦う前から覚悟で負けていたのだ。それは苦戦もする、というかこのままいったら本気で負ける。こちらも相手を潰す気でかからないと、同じ土俵に立つことすらできやしない。
「う……うう……」
モンスターを伏せ、さらにカードを2枚と、手札に残ったカード全てを場に出すサンドモス。その様子を眺めながら、心のどこかでどうしようもないやりきれなさを感じていた。
……本当に、それでいいんだろうか。デュエルモンスターズを命を奪い合う手段なんかとして割り切って戦うことは、正しい考えなんだろうか。デュエルって、楽しい物じゃなかったのかな。少なくとも僕にとって、命の奪い合いが楽しいものだとは思えない。
清明 LP3000 手札:2
モンスター:シャクトパス(攻)
魔法・罠:なし
サンドモス LP2400 手札:0
モンスター:???(セット)
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ