3部分:第三章
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第三章
それで困惑しながらだ。こう言うのだった。
「今日は誰と寝ればいいんだろうか」
「私達全員と寝れば?」
「そうしたらどうかしら」
「ううん、それが一番だけれど」
少なくとも一度に四人を相手にできる体力はあるのだった。絶倫と言っていい。
だがそれでもだ。誰が誰なのかわからずだ。彼は困惑し続けて言うのだった。
「同じ娘ばかりだと。本当にわからないよ」
こうした話もあった。そして笑い話だけではなかった。
殺人事件も起こった。クローン同士で伴侶の奪い合いの結果起こるものもあればだ。
浮気をしたクローンを持ち主が嫉妬のあまり殺す事件も起こった。その他には変態的な遊びをしてその中の事故や虐待の結果殺してしまう者も出て来た。
このことについてだ。法曹界は困惑することしきりだった。
「クローンに人権はあるのか?」
「このことは前から議論されていたが」
「人間のクローンだから人権はあるだろう」
「しかしクローンだぞ」
「クローンだとだ」
人権があるのかどうかすら疑問だった。それでだ。
クローンに対する殺人事件については判決が曖昧になっていた。有罪になる場合もあれば無罪になる場合もだ。国によってそれぞれだった。もっと言えばその状況によって。
幾ら何でも殺人事件で無罪になるのだ。これはおかしいという意見も起こった。
「クローンも人間だろう」
「いや、違うんじゃないのか?」
「クローンはクローンだろう?」
「それ以外の何でもないだろ」
「いや、人間だろう」
ネットやマスメディアでもこうした議論になった。しかしだ。
ここでも答えは出ない。ただしだ。
クローンとの間に生まれた子供は人間としての権利があった。これはこの問題がそもそも人口減少の解決の為のものだから当然だ。
だがこのことが議論をさらに複雑にさせた。つまりだ。
「子供が人間なら親も人間だ」
「クローンが人間でないのなら子供は半分人間でなくなるぞ」
「そんな訳のわからないことになっていいのか」
「それは矛盾していないか」
「だから違う」
ここでも議論が起こった。そして国連はこの問題についても議論することになった。その結果だ。
そもそもこの問題を提案したあの代表がだ。こう言ったのだった。
「生まれた子供が完全に人間ならばです」
「クローンも人間ですか」
「そう仰るのですか」
「はい、染色体は完全に人間です」
彼が言うのは生物学的な観点からだった。
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