第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
壊れかけの黒:隠者の矜持
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転移結晶を引っ張り出す。
「転移、《ラーベルグ》」
可能な限り声量を抑え、屋根の上に立つローブのシルエットに視線を返す。
敢えて俺が選んだのは、可能な限りの最悪手。相手方から見れば《こちらが敬遠するであろう手段》だからこそ可能性を第一に排除する遣り口。だからこそ試しに賭けに出てみたが、意外と効果はあったらしい。ここまで飛んできたということは、計画を早めるように指示を出していない証明だ。それに、どれほどAGIを強化しようとも、それはあくまでアバターの動作にのみ反映される数値だ。メニューウインドウ等のシステム処理については反映されない。故に、処理に速度を持て余すという本末転倒な現象が発生する筈なのだ。
それもなく、俺に追いついたということは、メニューウインドウの操作を行っていないという何よりの証左。恐らく、実行犯に連絡するより先に俺の正体を判別するべく優先順位を設定したのだろう。かなり分の悪い博打だったが、賭けてみた甲斐があったというものだ。相手の頭が切れるだけに、不確定要素を潰しに掛かってくれたわけだ。上手く行けば、まだPKの実行までに間に合う可能性だってある。
さらに、このまま現地に入ってしまえば、仮にピニオラが付いて来たとしても《自分から手を汚さない》というポリシーが邪魔して行動を自ら制限せざるを得なくなる。彼女の手口の性質上、圏内で獲物を見繕わなければ殺害は成立しない。だからこそ、この見立てには確証があった。
《保険》を依頼した相手がどう動くかも未知数な今、圏内PK騒動で死人を抑えるには俺が出張った方が確実なのだから。
ピニオラとの睨み合いは、やがて俺が青い燐光に消えるまで続いた。
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