第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
壊れかけの黒:隠者の矜持
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が現れたら、ちょっと無茶だけどデュエル申請で確認する』
一瞬、聞き耳スキルのバグを疑った。
『えーっ』
「嘘だろ」
目を丸くして驚愕するアスナと、俺の呆れた声が、隔てた距離を越えて重なった。
つまるところ、彼等は情報も碌に仕入れられずに行き当たりばったりの張り込みを敢行したこととなるだろうか。無謀な計画というか、見込みが杜撰というか、あまりにも粗末極まる諜報活動を目の当たりにして頭が痛くなりそうだ。せめて、生存している関係者から容姿の特徴くらいは聞き込めただろうにとも思ってしまうが、彼等とて圏内でプレイヤーが死亡する様を目の当たりにすれば冷静でいられなかっただろう。ましてや、俺など彼等を利用しようとコソコソ嗅ぎ回る立場なのだ。致し方ないとすることにしよう。
しかし、最初から最終手段の行使を厭わないというキリトの言に対して、アスナは何かを言い淀み、しかし言葉にすることなく険しい表情のまま頷き、改めて口を開く。
『………でも、グリムロックさんと話す時はわたしも一緒に行くからね』
きっぱりと、拒否権も与えられないくらいに宣言されたキリトはやや面食らったような表情であっらものの、それ以上は何も言わず頷くのみ。観念したような面持ちでメニューウインドウを確認する素振りがあってから、そのまま酒場の入口に視線を落とし始めた。どうやら本格的に張り込みを開始したようだ。
グリムロックを直接捕捉するとまでは行かなくとも、より詳細な情報にありつけると踏んでいただけに徒労の感も否めないが、別段これといって制限時間が課せられているわけでもない。しかし、二人が見つめる先にある酒場はさしづめグリムロックに関係のある場所であるということで相違ない筈だ。そうなれば、遺品を届けて接触したことのある俺にはまだ目はある。キリトとアスナを出し抜くようで悪い気もするが、圏内PKは彼等に任せるとしよう。
ともあれ、徐々に日も暮れてゆき、街路を行き交うプレイヤーの数が少しずつ増していく。
二人の視線の先にある酒場のスイングドアも頻繁に揺れては入店する客を迎え入れている。しかし、どんなに待てどもグリムロックの姿が見当たらない。何かしらの動きがあれば即座に察知できるようにキリト達も視界に納められる位置取りで監視を続けてはいるものの、双方に変化がない。ハズレを引いたという不安が膨らんでいく矢先、あろうことかキリトとアスナは何やら紙で包まれたものを口に運びだしたではないか。張り込みのオトモのつもりなのか、それともピクニック感覚なのか、彼等の緊張感の無さには度し難いものを覚えてしまう。二人の動向についてはこの際無視するとしよう。呆れて思わず溜息が漏れてしまった。
「………何しに来たんだ、あいつら…………――――ッ
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