第十話 弱さその九
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だが優花は龍馬と共に下校している時にだ、こう言ったのだった。
「最近皆僕のこと言ってるよね」
「ああ」
否定せずにだ、龍馬は答えた。彼のその横で。
「そうだな」
「どうしてかな」
「最近御前落ち込んでるだろ」
「だからなんだね」
「どうしたのかってな」
「心配かけてるんだね」
「そう言えばそうなるな」
ここでもだ、龍馬は否定しなかった。この辺り嘘を言えない彼の性格だった。
「だからな」
「明るくだね」
「そうなった方がいいな」
「やっぱりそうだよね」
「何でそうなったかはな」
それはとだ、龍馬は優花に言った。夕刻の道を共に歩きながら。
「言えたらな」
「そうなったらだね」
「言ってくれるか」
「うん」
力ない声でだ、優花は頷いて答えた。
「そうしていいんだね」
「ああ、俺でよかったらな」
自分から言った龍馬だった。
「言ってくれよ」
「それじゃあ」
「約束するな」
龍馬は自分自身にとっては絶対のことを言った。
「言ったことはな」
「誰にもだね」
「言わない」
強い声での返事だった。
「そのこともな」
「龍馬はいつもそうだね」
「約束を破るな」
「お祖父さんに言われてるからね」
「ガキの頃から言われてるんだよ」
それこそ彼が物心ついた時からだ。
「約束は守れ、嘘は言うな、人は裏切るな」
「そうしたことはだね」
「絶対にするなってな」
「そう言われてるからだね」
「ああ、俺は祖父ちゃんに色々教えてもらっててな」
「尊敬してるから」
「絶対にしない」
そうしたことはというのだ。
「間違ってもな」
「だからだね」
「ああ」
「あの人はね」
優花も龍馬の祖父のことを知っているのでこう言った。
「立派だよね」
「昔の趣があってな」
「昔の倫理観を守ってるね」
「武士っていうかな」
「実際に龍馬の家って士族だったよね」
「昔はな」
龍馬はこのことは少し微妙な顔で答えた。
「そうだったな」
「それでなのかな」
「何でも百石取りの藩士の家だったらしいな」
「百石って結構だったんだよね」
「武士の中ではな」
江戸時代でそれだけの石高といえば中々の家であった。
「中々格のある」
「それでかな」
「祖父ちゃん武士って意識あるんだな」
「そうなんだね」
「だからか、けれどな」
「そのお祖父さんの教えをだね」
「俺大事にしてるつもりだよ」
こう優花に話すのだった。
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